もしもあなたがお妃候補になったら

ところで、もしもあなたが「皇太子妃になってほしい」と望まれたとしたら、いったいどう思うだろうか?「ありえない!」と笑わずに、試しに想像してみていただきたい。

神話の時代から2700年近くにわたり、万世一系の系譜をたどってきた、世界でも類を見ない歴史を持つ日本の皇室。一時は天皇が「現人神」とされていた時代もある。第二次世界大戦後に実質的な統治権はなくなったが、日本国憲法により「日本国の象徴」となられた天皇は、現在でも国民の心の拠り所だ。

その公務は、国内外の行事への出席、災害が起きた際の被災地への慰問などと、多岐にわたる。そして、国と国民の安寧を祈る「祭祀」は、天皇の最も重要な役目だ。常にスケジュールを管理され、精神的には、国民のために24時間働いていると言っても過言ではない「無私」の存在。

未来の天皇となられる皇太子。その妃になるということは、自らもまた「私」を捨てる覚悟のいることではないだろうか。

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ディズニーアニメのプリンセスとはわけが違う。綺麗なドレスを着てかしづかれるとしても、一生自由を失くしてしまうような生活に、普通は耐えられるわけがない。

先に書いたように、雅子さまは、優秀すぎるほど優秀な女性だ。人並外れたキャリアと能力をもち、それを生かせる場所を、懸命の努力で手に入れた自分の足で立ち、思うように生き、社会に貢献したいと、大きな夢と理想を抱いていた。だが、皇室という閉ざされた場所で、それらすべてを封じ込まれてしまった時、雅子さまの長い長い苦悩の日々が始まったのだ。

26年前のご成婚の日、祝賀パレードで輝くような笑顔を見せていた皇太子妃は、ご自分の未来にどれほどの試練が待ち受けているのかを知らなかっただろう。でも、あの時の雅子さまが、「私」を捨て、日本という国のために生きるご覚悟を持っていたことは、確かだと思う。

1993年6月9日に行われた結婚の儀。この輝くような笑顔は日本中を虜にした Photo by Getty Images

かたくなに皇室と関係を持つことを拒んでいた雅子さま。その雅子さまに、皇太子妃となる決心をさせたものは何だったのか……。

それは、次回の記事で詳しく書いてみたい。

参考文献
皇后雅子さま物語』(文春文庫)友納尚子
雅子妃 非運と中傷の中で』(文春文庫)友納尚子
皇后雅子 妃から后への三十年』(講談社)石井勤
雅子さま ご成婚十年の苦悩』(講談社)渡邉みどり
素顔の雅子さま』(主婦と生活社)週刊女性皇室取材班

編集部注:小和田恒氏の「ひさし」の字は、本来は別の人名用漢字です。

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