〔PHOTO〕iStock

外国籍2万人超が「就学不明」の衝撃…日本で議論されない解決策とは

アフリカとノーベル経済学賞から学ぶ

不就学児問題の悲惨な状況

先月のことになるが、日本で暮らす外国籍の子どもの不就学問題が大きな話題となった。小中学校相当の年齢の子どもの2万1千人超が不就学状態の可能性があるうえ、市町村によって対応がまちまちであるという悲惨な状況が浮き彫りとなった。

報道や論調を見ていると、その多くがこの問題の解決の重要性を認識していて大変心強いし、今年の国連総会での演説で安倍首相が女子教育の重要性を訴えたばかりなのに、その足元で不就学問題が重大であってはお話にならない。

国際教育協力には主に人権と経済的なアプローチの二つが存在するが、まず前者から見ても、確かに外国人は日本の憲法が定める教育の義務の対象外ではあっても、日本も批准している子どもの権利条約から考えれば、国籍が理由で子どもが教育を受ける権利が自国内で侵害されている状況を放置しているのは許されるものではないだろう。

また、経済的アプローチから考えれば、教育が人的資本投資の一部であることから分かるように、不十分な教育しか受けていない構成員が社会に存在すれば、生産性・医療システム・治安といった様々な側面から社会全体でそのコストを将来背負うことになるのは容易に予想がつき、それよりはしっかりと教育を施したほうが得策である。

 

多くの論調は、この点までは正しい議論を繰り広げているが、提案する解決策はおよそ十分なものとは言えない。主に提案されているのは、多言語への対応や日本語教育の充実など、言語政策の観点からのみである。

もちろん、この点は必須であることは間違いない。教育系の国際機関であるユネスコが推奨するように、少なくとも小学校教育は母語で受けられるような環境整備は重要である。英語以外の言語で日本の高等教育を受けられる機会が極めて限られており、日本という社会の一員となることを考えれば、日本語教育の充実も欠かせない。

〔PHOTO〕iStock

だが、本当にそれだけで十分だろうか? 確かに社会の豊かさという大きな違いはあるものの、その点をのぞけば、この問題の構図は途上国における不就学の問題と構図はそこまで変わらないように見受けられる。

しかし、途上国の中の主流言語を解さないマイノリティが、母語教育・主流言語教育の充実によって全員が就学するようになったわけでもないし、ましてやマジョリティと同じ教育水準になったわけでもない。

なぜなら、マイノリティが直面する課題は言語だけではなく、それらを乗り越えないことには、社会のマジョリティと同じだけの教育水準を受けるに至らないからだ。

もちろん、マイノリティの不就学を引き起こすすべての課題に取り組むためのすべての教育政策オプションを提示すると、一冊の教科書が書けてしまうため、今回は現在の日本の議論で見落とされている言語教育以外の主流な3つの教育政策オプション(低学力・健康・インセンティブ)に絞りつつ、それらを簡潔に紹介する。