慶應大学アメフト部が「著しく不適切な行動があった」と大学側から無期限活動停止処分を受けた。学校側は原因を公表していないが、盗撮だったとも報じられている。

「悪いこと」に対する子どもたちの意識はどのように育てればいいのだろうか。「叱ること」は時に大切だけれど、難しい。電車で行儀が悪い、子どもが嘘をついたことが発覚した、練習や授業に遅刻した――子どもを注意する必要があるとき、親は注意する理由をどのように伝えているだろう。

ながく教育の現場を取材し続けてきたジャーナリストの島沢優子さんに、自身が見聞きした例をもとに、大人が陥りがちなことを伝えてもらった。

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「恥ずかしいから」ダメ?

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何年か前の秋の朝。電車に乗ったときのこと。

「糖が欲しい」

そうつぶやいた隣の小学生らしき女の子は、ピンク色に白い水玉のリュックからクッキーの入った袋をとりだそうとした。「糖が欲しい」なんて表現をするのだから、きっと賢い子に違いない。

抱えている参考書や時間から想像するに、中学受験の会場へ向かう途中のようだ。見渡せば、他にも似た親子がたくさん乗っていた。

すると、女の子の前に立っていた父親らしき男性が「食べちゃダメ」と制した。
こんなところで恥ずかしい。このあとお昼食べるのに、何考えてんの!?」

昼食を食べる前なのか。父親の言うことはわかるし、電車の中で飲食はご法度だけれど、ここまで強い言い方をする必要があるのか。それに糖は脳を動かすには必要だ。「お、よく知ってるね。じゃあ、電車降りてから食べようか」とか、「じゃあ、一口だけね」などと大目に見てあげられないのか。子どもの気持ちを考えてあげられないのか――とみているおばさんは悶々とする。

だが、女の子は父親から否定されることに慣れているのだろう。無表情でクッキーをリュックにしまい、今度はごそごそと奥からいろんなものを引っ張り出した。

問題集、解きかけみたいな算数のプリント、受験票。彼女はたぶん持ち物を確認したかったんだと思う。だが、またもや父親から「電車の座席に座ってゴソゴソしない!もう……」と制されてしまった。

もう、のあとの声は電車が揺れる音でかき消されたが、口元の様子で「ハズカシイ」と父親はつぶやいたようだった。

子育てをしていると、親たちが「恥ずかしい」と嘆くのをよく聞く。多くは冗談で笑って言い合うけれど、前述した電車の父親のように心の底からそう感じる人もいる。子どもが起こすネガティブなことを自分のミスだと感じるのだろう。

「子育ての恥はかき捨て」

私は長年、講演などで親御さんたちにこう訴えてきた。小さな嘘をついたり、受験に失敗するなど子どものネガティブに対し、起きた事象に動揺してしまい、子どもの気持ちを察する前に自分の気持ちを口に出してしまいがちだ。