即仕事に戻るために
麻酔なしで卵子採取

また、朝から夜までびっしり会議が詰まっている管理職にとっては、1日3回のホルモン剤服薬も容易なことではないように思う。一度服薬を忘れたからと言って治療成績に大きく影響が出る可能性は少ないと聞く。それでも、胚移植後で体内の黄体ホルモン量を一定水準に保つことが着床成立に重要と分かっているにもかかわらず、仕事が忙しくて続けて2回服薬を忘れてしまった場合などは、「今周期も自分のせいで上手くいかないかもしれない」と自己嫌悪に陥ってしまうこともあるのである。

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今考えれば、そこまでやる必要があったのかと苦笑いしてしまうような思い出もある。採卵は10~30分で終わる比較的簡単な手術であり、医師がエコー画像を見ながら膣壁から卵巣に長い針を刺して卵子を取り出す。事前にエコーで確認してある卵子数によって、術中何回くらい針を刺すか予測できるので、穿刺回数が多くなりそうな場合は静脈麻酔を薦められる。

私は、数が多くても常に麻酔なしで採卵をお願いしていた。麻酔をかけると、術後の回復に少し長めに時間がかかる。会社を抜け出してきているのだから、少しでも早く会社に戻らなければ。そのためには採卵の痛みくらい麻酔無しで耐えます、という姿勢を貫いていたのである。採卵の痛みは人によって感じ方が大分違うと聞くが、私の場合は、2~3回の穿刺であれば術中の痛みに耐えることはできた。術後の痛みは特になく、終わるや否や着替えて病院を飛び出して会社に戻るのを常としていた。

ただ、どんなに採卵経験豊富な先生でも卵子がエコー画像に映り辛い位置にあったり、そもそもアプローチしづらい位置にあったりすると、何度か針の刺し直しをすることがある。2回くらいの穿刺で済むだろうと思って無麻酔でのぞんだ採卵で、8回穿刺をすることになった際は、さすがに手術台の上で涙目になった記憶がある。