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もう支えきれません…「高齢者の高齢化」が日本人に襲いかかる

「年金は破綻する」を検証する(前篇)
危機的な状況を迎えている年金制度。年金「最終警告」の著者、島澤諭氏が政府のデータから日本の経済状況、深刻化する財政危機の真相を読み解いていく。年金は破綻するのかを検証する。

日本の人口は反転している

 

「年金は破綻する」論を検証するために国民皆年金が実現した当時の日本の状況をおさらいします。それにより、当時の状況と現在がいかに違うのかが良く理解できると思いま す。みなさんは国勢調査をご存じですか ?
 
国勢調査の第 1 回は、1920年に実施されました。当時は、国の勢い、つまり国力は人口規模やその年齢構成にあると考えられていた時代です。ですから、国勢調査は、日本に住むすべての人・世帯を対象として行われていました。いまでは、総務省統計局が5年に一度実施しています。次は、来年2020年に実施されます。
 
国勢調査は、日本の姿を知る上で、とても重要な統計で、基幹統計の一つに指定されています。財政検証の基礎資料でもある「日本の将来推計人口」や「国民経済計算」などでも、国勢調査の人口が基礎資料として使われています。
 
国立社会保障・人口問題研究所が、最新の国勢調査をもとに将来の人口予測を行っています(※1) 。それによりますと、2029年に1億2000万人を下回った後も減少を続け、2053年には、9924万人と1億人を割り込みます。2065年には8808万人にまで減少すると予測されています(図 1)。

(※1)国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」(2017年4月)。以下の数値は、出生中位・ 死亡中位推計結果です。将来推計人口は、将来の出生、死亡、平均寿命や国際人口移動などについて一定の仮定を設けて、日本の将来の人口規模や年齢構成等の人口構造の推移を推計したものです。

高齢者比率は上昇し続ける

問題は、人口が減ることだけではありません。

日本の人口減少は、高齢者が相対的に増えるなか、進んでいきます。しかも、高齢化率が安定化するのは、2050年代半ば以降からです。日本は、しばらく現役世代中心の社会から高齢者中心の社会への過渡期にあります(図 2)

2018年では、高齢者数3558万人、高齢化率 28・1%となっています。さらに、「団塊の世代」が75歳以上となる2025年には、高齢者は3677万人に達すると見込まれています。その後も高齢者は増え続け、2042年に3935万人でピークを迎え、その後は減少に転じるものと推計されています。総人口が減少する中で、高齢者数が増えるため、高齢化率は上昇を続けます。

2036年に33・3 %で3人に1人が高齢者となります。2042年以降も、高齢者人口は減少に転じるのですが、高齢化率は上昇を続けます。

そして、 2067年には38・4%とピークに達します。実に、国民の約2・6人に1人が高齢者となる社会が到来するのです。ただ、日本の場合は、単に高齢化が進行するだけではありません。

高齢者は、74 歳までの前期高齢者と75 歳以上の後期高齢者に分けることができます。後期高齢者になりますと、身体の衰えが著しくなり、医療福祉、介護の対象となりやすくなります。2018年には、前期高齢者1706万人、後期高齢者1798万人と、前年の前期高 齢者1767万人、後期高齢者1748万人から逆転しています。

その後も、後期高齢者は増え続けていきます。総人口に占める 75 歳以上人口の割合は、2018年に、14・2%ですが、2065年には25・5 %となります。なんと、約3・9人に1人が75歳以上になるのです。高齢者の中でも後期高齢者が増える「高齢者の高齢化」が今後の日本の高齢化問題なのです。

 

人口構造は経済に大きな影響を与える

みなさんのなかで、「人口ボーナス」や「人口オーナス」という言葉を耳にされたこと がある方はいらっしゃるでしょうか ?「人口ボーナス」や「人口オーナス」に は、実は、明確な定義はありません 。

一般的には、「人口ボーナス」とは、老年人口(65歳以上)と年少人口(15歳未満人口)の和である従属人口を生産年齢人口(15歳から64歳までの人口)で割って得られる従属人口比率が低下する局面を指します。

逆に「人口オーナス」は、従属人口比率が増加する局面を指します。特に、老年人口の増加が経済発展にとって重荷となった状態のことを「人口オーナス」と言います。オーナス(onus)とは、英語で「重荷」「負担」を意味します。

人口オーナス期には、高齢者が増加 し、それを支える現役世代が減少していますので、医療、年金等の社会保障負担が増加し、労働供給が経済成長の足かせとなります。つまり、人口構造は、供給面や需給面から直接的に経済に影響を与えるばかりでなく、財政や社会保障制度を介して、間接的にも経済に大きな影響を与えるのです(図 3 )。 人口と経済は、それぞれ独立に動くのではありません。お互いに影響しあっているのです。

実際、図3からは、高度成長期には、人口ボーナスが大きく、バブル崩壊から現在に至る失われた20年は人口オーナス期にあることが分かりますね。