子どものトラウマは、人生が狂うほど根深いことをご存知か?

踏み出すためには、自ら向き合うこと
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自らのコントロール方法を学ぶ「情動調律」

新生児の行動の状態は、6段階しかないと言われ、行動の状態は連続性がありません。例えば、お腹が減ったなど不快感があれば泣き、要求が満たされるとまどろみはじめます。これを「離散的行動状態」と言います。

それに対して、大人が子どものサインを読み取って要求に応えることで、子どもは自分の気持ちに気付き、いろいろな感情を区別できるようになっていきます。

そして、「悲しい気持ちを抱えながらも、徐々に次のことに関心が向く」というような、ある状態から別の状態への移行もなめらかになっていきます。子どもが、自分の中にはいろいろな状態があり、それらがつながって自分がある、ということを実感するようになります。

【図】情動調律の発達
  生まれたばかりの離散的行動状態から情動が複雑化していく(『トラウマのことがわかる本』を参考に作成)

子どもが自分の気持ちに気付くようになるには、大人がうまくリードする必要があります。泣く子に対して「悲しいの?」「さびしいね」などと代弁したり、共感したりして受け止めることなどが挙げられます。こうした様々な感情を認識していくことを「情動調律」と言います。

【写真】大人の対応と導きが情動を発達させる
  大人が適切な対応をして、子どもの心を導いてやることで、情動が発達する photo by gettyimages

調律の機会を奪う「小児期逆境体験」

情動調律で様々な感情を認識すると、よりよい状態、より快適な相互関係が築けるようにするには、どうふるまえば良いか、自分の気持ちにどう折り合いをつけるかなど、感情を調節し、それを表現する方法を身につけていきます。

ところが、こうした調節方法を学ぶ機会を失うと、複雑なトラウマを生みやすくします。虐待(しつけと称する暴力、暴言)、目の前で繰り返される家族間の暴力、あるいは頻繁に養育者が替わることなどの体験です。こうした体験を「小児期逆境体験」と言います。

逆境のなかで育つ子どもは、「ひどいことをされる」「捨てられる」などの恐怖感から、様々な感情や行動を抑圧します。そのため、多様な感情に気付き、それを適切に表現することがわからないままになってしまうのです。

DV環境に育つなどの「小児期逆境体験」は、その子どもの感情を抑圧する

動画は、話題になったWESTE & Co.による児童虐待体験VRパイロット版。逆境体験を子どもの目線で見ることができる。なお、衝撃的な内容が含まれているため、気分が悪くなるなどの場合はすぐに視聴を止めるよう、注意喚起がなされていることを付け加えておく。

不安定な大人との絆は、人生に長く影響を与える

子どもと周囲の大人とのかかわりが適切か否かが、子どものトラウマの形成に関与するということに関しては、アタッチメントの問題もあります。

 

アタッチメントとは、特定の対象(養育者など周囲の大人)との情緒的な絆のことで、アタッチメントが安定していないと、心の傷の残りやすさに影響するのです。

アタッチメントのタイプには次の4つのタイプに分ける考え方があります。

アタッチメントのタイプ

アタッチメントの違いが分かりやすいと言われる、「離れていた養育者(親)と再会したとき」の子どもの行動から分類した。

安定型
【再会時の子どもの行動】泣き出したり、抵抗を示すが、養育者に近づくとすぐに落ち着く
【よくある養育スタイル】養育者は子どもに目を配り、ほどよい働きかけができている
回避型
【再会時の子どもの行動】泣く、混乱するなどのことがない。離れていた養育者と再会しても目を逸らす、避けようとする
【よくある養育スタイル】子どもの働きかけに対して反応が少なく、子どもが苦痛を示す場合はかえって遠ざける
アンビヴァレント型
【再会時の子どもの行動】強い不安や混乱を示す。離れていた養育者と再会すると、近づくものの怒って叩いたりする
【よくある養育スタイル】子どもが出すサインに気づきにくく、養育者の都合で対応が変わる
無秩序・無方向型
【再会時の子どもの行動】近づきつつも避けようとするなど、不自然でぎこちない。突然すくんだり、うつろな表情をみせたりする。初対面の人に親しげにふるまうことも
【よくある養育スタイル】子どもを脅えさせるなどの不適切な対応。養育者自身も問題を抱え、精神的に不安定なことが多い

(『トラウマのことがわかる本』より)

このうち、虐待を受けた子どもは、最後の〈無秩序・無方向型〉を示す、と言われます。

虐待は、それ自体が心に傷を残すうえ、その傷を回復しにくくさせるともいわれ、二重のトラウマ原因と言えます。また、そもそもアタッチメントが安定していないと、成長後に人間関係の悩みを生じやすいとも言われています。

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