発達期のトラウマは、広く根深く影響を与える
子ども時代のトラウマ体験は、その後の人生の生きづらさにつながる恐れがあります。子ども時代に生じた複雑なトラウマは、あらゆる方面に長く影響を残します。
オランダ出身で米・ボストン大学のベッセル・ヴァン・デア・コーク博士(Bessel van der Kolk、1943-)は、この発達期に生じたトラウマを〈発達性トラウマ障害〉として、大人のトラウマとは呼び分けることを提唱しています。

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子ども時代に生じるトラウマの影響がより深刻なものになるのは、心身ともに発達していく途中にあるため、傷が残りやすいだけでなく、心の健やかな発達を妨げてしまうためです。
トラウマが生じる事柄が、大人にとってはささいなことでも、子どもにとっては大きな傷となって残ることがあります。また、年齢がより低く発達の早期であるほど、影響は広く深いものになります。
子ども時代に生じるトラウマの特徴
- 言語の形成過程にあるから、イメージが詳細に残りやすい
- トラウマ的な状況は、細部まで脳に刻み込まれやすい
- 自己と世界を関係づける過程にあるから、自責感を持ちやすい
- 問題が生じた際に、自らに原因があると思い込みやすい
- 世界観の形成過程にあるから、特有の認知が形成されやすい
- 子どもにとって家庭内が世界。家庭内で起こったことが、その子にとっての世界であるため、世界全体を恐ろしいものとして認識してしまう

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「親から子へ」はもちろん、「親どうし」も影響大
子どもは、1人で生活できるようになるまで、長い時間がかかり、その間、養育者(多くは親)をはじめとした周囲の大人との適切なかかわりを必要とします。
養育者との絆が不安定であったり、虐待を受けたりするなど、大人から子どもへの不適切なかかわりは子どもの心に影響を与えるのはご理解頂けるかと思います。
さらに、親などの大人どうしの不和やDVの目撃なども、子どもが安心して過ごせる場を奪うことになり、トラウマ的な影響を及ぼすのです。
では、こうした問題のある発達過程で生じるトラウマがどのようにして生じるのか、その子どもに与える影響を考えながら、人生の流れの中で見てみましょう。