朝ドラ『スカーレット』から溢れる、滋賀県の「愛すべきマイナーさ」

舞台は、滋賀県の信楽です
堀井 憲一郎 プロフィール

都会と田舎

関東における東京と、関西における大阪のポジションはずいぶん違う。

関東においては東京は文句なしにトップである。

他県が東京を越えることはない。圧倒的なトップの親分である。

ところが関西では、大阪は他をそんなに圧倒できない。とりあえずトップは大阪だが、暫定の一位というような気持ちがある。経済のトップだが、文化部門では京都のほうが上かも、というようなところだ(大阪大より京都大のほうが偉い、というたぐいの話)。

京都以外でも、それぞれ、うちはこの分野では大阪や京都には負けてへんで、という気位を持っている。関西の各県には何かしらの意地があるのだ。

 

古くから人がたくさん住んでいたからだろう。京都にかぎらずどこだって千年から千五百年の歴史を語れるのだ。全府県そうである。

関西は、そういうところがおもしろい。また面倒な部分でもある。

『スカーレット』は、その「関西の都と鄙(都会と田舎)」の対比を、さりげなく、楽しく描いている。ちょっと地味だけど、とても味わい深いおもしろさを出している。

特に私は、大阪弁ではない滋賀の言葉でのボケやツッコミが、とても楽しい。

ヒロインが使う「ひと部屋全部使うて、ええんけ」というような、語尾に「け」をつける言葉遣いがすごく懐かしい。ああ、近所の人や、という感興を抱いてしまう。滋賀の言葉だし、京都の言葉でもあった。関西の中央の大阪言葉ではなくても、その言葉のやりとりが関西ぽくてとてもおもしろい、というのがこのドラマの魅力のひとつだろう。

関東で、茨城弁漫才や栃木弁漫才が受けるのとはちょっと意味が違う。それぞれが、うちの言葉は大阪と対等や、とおもいながら使っているおもしろさでもある。歴史と自負が、それを成り立たせている。

関西エリアの、そういう細かい差異を意識しながら見ていると、『スカーレット』はいっそう楽しめるとおもう。

関連記事