大阪と滋賀の絶妙な関係
また、滋賀には「草津」がある。
朝ドラ『スカーレット』でも、繰り返し「草津」と出てくるので、不思議がった人もあったろう。
滋賀には大津があって草津がある。津はつまり港のことである。琵琶湖が船を使う重要航路だったときの名前だ。
関西人にとって(京都人にとって)草津といえば、この滋賀の草津のことであった。だから子供のころ「草津よいとこ、一度はおいで」や「お医者さまでも草津の湯でも」というフレーズを聞いて、子供だから群馬の草津温泉なぞ知らないから、なんでここに滋賀の草津が出てくるんだろうとずっと不思議だった。
だから関西エリア以外の人が『スカーレット』で「草津の人」と聞いて、えっ、なんでここに草津が出てくるんだ、と違和感を抱くのが想像できる(子供のころの私と真反対だけれど同じ驚きである)。
この機会に滋賀の草津の存在を知って欲しいとおもう。まあ、あんまり名所はないし、湯煙も立ってないんだけどね。
琵琶湖は滋賀県の真ん中にはない。やや左上にずれている。
だから右下には何でもないエリアが広がっている。南北でいえば、南東側である。忍者が住みたがりそうなエリアである。
『スカーレット』の舞台の信楽はそこにある。
あまり知られていない滋賀県の、これまたマイナーなエリアなのだ。
いまの住所としては甲賀市になる。20世紀のあいだは信楽町だった。
近い都市は草津になる。そのあたりからは京都へはちょっと頑張ればいける。ただ、大阪は遠い。電車に乗ってしまえば、そんなにかかるわけではないが、でも土地にいると心理的には遠く感じてしまう。
それが関西地方の心理的な距離感である。
『スカーレット』では、「大阪と滋賀の距離」が何度となく描かれている。まあ、田舎のネズミと都会のネズミはどっちが幸せかというような話である。朝ドラではお馴染みの構造です。