史上最も劇的な日本シリーズを制した西鉄はなぜあれほど強かったのか

大エースが語った野武士軍団の真実
現代ビジネス編集部

金玉が当たる音の確認役!?

エースの座を勝ち取ってからも、先輩たちの愛のムチは続く。

「ある試合で満塁のピンチを迎えて、もうあっぷあっぷだったことがありました。

誰か声をかけてくれないものかと、内野を見回すと、サードの中西さんはこっちにお尻を向けて、レフトスタンドを見上げている。ショートの豊田さんは、腕を組み、怖い顔でこっちをにらんでいる。セカンドの仰木さんは、まるでダンスでも踊るように自分の守備位置の土を足でならしている。そしてファーストの河野さんはベンチをじっと見て、サインの確認中。

誰も寄って来ない。『自分で蒔いた種は自分で刈れ』と無言のプレッシャーをかけてくる。その後は、なんとか三振で切り抜けましたけどね」

大エースも、入団時は打撃投手の扱いだった

個性的な先輩が多かったが、「水爆打線」の異名をとる打撃陣の中核だったスラッガーの中西太と豊田泰光は特に強烈だった。

西鉄全盛期を支えた打線の核、中西太(右)と豊田泰光

「中西さんのスイングスピード、打球の速さは凄まじかった。ファウルチップすると焦げ臭かったからね。スイングも、ビュッじゃなくて、ブワン、ブワンって音がする。

ただ、まいったのが、宿舎で素振りに付き合わされるとき。裸で腰にタオルを巻いただけで素振りをするんだけど、きちんと振れると、腰の回転につられて金玉が左の太腿にパチンと当たる音がする。その音がしてるかどうかチェックさせられるんですよ。あれは勘弁してほしかったね」

日本プロ野球史上最も飛んだホームランを打ったといわれる中西のスイング
 

「豊田さんは、ホント勝負強い人だった。私が投げていた試合で、満塁で打順が回ってきたとき、『おまえ、何点ほしい?』って聞くから、『2点です』って答えると、『よっしゃ、まかせろ』と言って、ホントに2点タイムリーを打った。

今度は、別の試合で3点をリードした場面で同じことを聞かれて、『1点でいいです』と答えたら、『なんだ、1点でいいのか』って物足りなそうな顔で出て行って、犠牲フライを打ってきた。そんな芸当ができるならヒットを打てばいいのに、シャレのきいた人だったね」

勝負強い打撃に定評があった豊田