地球のみなさん、こんにちは。毎度おなじみ、ブルーバックスのシンボルキャラクターです。今日も "サイエンス365days" のコーナーをお届けします。
"サイエンス365days" は、あの科学者が生まれた、あの現象が発見された、など科学に関する歴史的な出来事を紹介するコーナーです。
速記者で、日本速記術の創始者、田鎖綱紀(たくさり・こうき、1854-1938)が、1882年9月に日本で初めての速記法と言われる『日本傍聴筆記法』を日刊新聞の「時事新報に」発表、翌月の28日に日本傍聴速記講習会を開催しました。
特別の記号で記録し、後で普通の文字に書き直す速記は、すでに前4世紀にギリシアで使用されていたといいます。日本では、江戸末〜明治初頭にわずかに紹介された事例がありますが、国会の開設(1881年・明治14年に国会開設の詔、1890年・明治23年第1回帝国議会)をめぐる議事録の必要から注目が集まるようになりました。

この田鎖は、盛岡藩の家老を務めた家柄の出身で、維新後は身につけた測量や製図の知識を活かして、外国人技師のもとで働いていました。その際に、外国人技師が母国とのやり取りする手紙の執筆で、速記を生かしていたことを見て興味を持ち、独自に研究を重ねました。
そして、英語の「ピットマン式」と呼ばれる系統の流れを汲む「グラハム式」を五十音に翻案しました。

参加者は田鎖の速記スピードに驚嘆し、伊藤博文が田鎖を「電筆将軍」と呼んだことが話題になったそうです。その後、長距離電話が開設されると、電話速記によるニュースの速達にも利用され、多くの速記者が活躍しました。
速記には、文字を簡略化する草書派、点や線を組み合わせる幾何派の2系統があり、のち幾何派をもとに多くの方式が考案されました。現在は、おもに参議院式、衆議院式、中根式、早稲田式の4つがあり、日本速記協会による検定も行われています。また、ソクタイプなどの速記機械、補助にテープレコーダーなど、機器を利用することも多いそうです。
パソコン音声入力も実用化された現在、今後は速記術がどう受け継がれ、どう変化・発展していくのか、興味深いところです。