全裸監督・村西とおると、ドン・キホーテ社長との「意外な共通点」

村西とおる「わが人生最高の10冊」
村西 とおる プロフィール

板谷氏は、一見うんざりしたようにそうした内情を語っていくのですが、しかし根底にあるのは、家族の強いつながりなんです。

板谷氏自身はヘビースモーカーで、体重は115キロありました。あまり健康的な生活を送っていなかった結果、ある日脳卒中で倒れて、2ヵ月間意識を失います。

入院中、お母さんが板谷氏の水虫を治すためにずっと足を酢で洗ってくれて、もう文章を書くことは難しいかも、と板谷氏の病状が医者から説明された時には、とくに文筆経験もない弟のセージさんが「イザとなればボクも書けますしね」と言ってのける。

みんな破天荒だけど、それぞれまわりへの確かな優しさがあることが随所から伝わってくる。笑いながら、家族の強い絆にほろりとさせられます。

 

人間をみつめて』は、精神科医である神谷美恵子氏が、長年ハンセン病の患者さんたちの治療にあたられてきた日々を綴った作品です。神谷氏の軸にあるのは、「なぜ、苦しんでいるのが私ではなく、あなたたちなのか」という思いです。本当に相手の目線になって考える、彼女の優しさに心が打ち震えました。

そうした視点は本橋信宏氏の『東京最後の異界 鶯谷』にも感じられます。

本橋氏は高みから人を断罪するようなことは決してせず、ひとりの人に徹底的に寄り添って、目で見て、肌で感じたことを軸に文章を書く人。そうした彼の特色がもっとも表れているのが、性風俗の世界を生きた女性たちを描いたこの本であると思います。

コメの話』はコメを通して、さらに大きな広がりを感じられる一冊です。どういった栄養素が含まれているかなど、コメに関する知識を得られることももちろんですが、コメができる背景、つまり自然に関する学びもふんだんにあります。

コメができるためにはそれぞれ豊かな緑や空気、水が必須で、コメが育つような土壌を守ることが、日本を守ることにもつながるのだと。井上ひさし氏ならではのユーモアも随所に光り、事あるごとに読み返しています。

本を読むことは、自分自身を解放することだと思っています。日常で触れる文章はどうしてもデータや資料など、仕事に関連したものになりがちですが、そんな自分をクリーニングする感覚に近い。

忙しくても、こうした自分のための読書は今後も大切にしたいです。(取材・文/若林良)

▼最近読んだ一冊

「どのページをめくっても、心にグサッとくる古今東西の箴言がちりばめられている。日々忙しく、自分自身がコントロール不可能になりがちな毎日の中で、この本に触れることでなんとか正気を取り戻しています(笑)」