神戸・教員いじめ問題「大人によるいじめ」の過酷な法的リスクを問う

「いじめ」と「いじり」は違う
菊地 智史 プロフィール

「大人」が負うリスクは段違い

以上、ビジネスパーソン向けに、大人のいじめのリスクを解説してきた。

たしかに、未成年もいじめをすることによって刑事上・民事上の責任を追及されることはある。とはいえ、同じいじめであっても、未成年の場合と比べて、加害者となった場合に大人が負うリスクは未成年の場合とは段違いに大きい。未成年の場合なら、加害者になってしまったことを反省し更生して大人の社会に巣立ってゆく道は広く確保されている。

 

しかし、今回のように職場でのいじめで大人が加害者になってしまった場合、刑事上の責任や民事上の責任を負い、職場においても処分を受けることで、人生が大きく変わってしまう可能性がある。

もし、あなたがいじめの加害者となって逮捕されてしまったら、友人や知人はあなたをどのように見るだろうか。もし、あなたがいじめの加害者となったことで被会社に慰謝料を支払うことになってしまったら、あなたのパートナーやお子さんはあなたをどのように見るだろうか。もし、あなたがいじめの加害者となったことで懲戒処分を受けてしまったら、あなたの職場の同僚はあなたをどのような目で見るだろうか。

このように具体的に想像してみると、法的リスクに加え、大人が加害者となった場合の社会生活に対する事実上の負の影響は、はかりしれないことがわかってもらえるだろう。

「いじり」と「いじめ」

たしかに他者をいじめているときは、バラエティー番組の「いじり」のような雰囲気で、楽しいと感じるかもしれない。被害者も逆らえずに愛想笑いでやり過ごそうとすることもあるだろうから、いじめをしているという自覚を持ちづらいかもしれない。「いじり」は過激になればなるほど笑えるかもしれない。それを見ている周囲も一緒になってはやし立てるかもしれない。

しかし、他者をいじめることで得られる一瞬の楽しさは、人生を棒に振るリスクとは絶対に釣り合わない。笑顔を浮かべて耐えていた被害者が次の日に警察に駆け込む可能性もある。いじめの具体的な行為が過激になるほどリスクは大きくなる。はやし立てていた周囲の人たちも、加害者の烙印を押された人間には同情してくれない。

ご理解いただけたと思う。大人がいじめをすることは、コントロールが困難な規模のリスクを負担することと同じである。理性的なビジネスパーソンは、絶対にいじめに加担しないことで、無用のリスクを人生から排除するべきだ。「いじり」と「いじめ」の境界線が分からないという人は、他者の生命身体や財産、名誉や行動の自由といった傷つけるべきでないものを傷つけないように注意することで、いじめの加害者となる可能性を相当程度回避できるだろう。

このような理解を踏まえ、もし、今現在いじめに加担してしまっていると気づいた人がいれば、すぐに被害者に謝罪して、いじめを止めてもらいたい。それが、あなた自身の人生を守るための、最善の方法である。