神戸・教員いじめ問題「大人によるいじめ」の過酷な法的リスクを問う

「いじめ」と「いじり」は違う
菊地 智史 プロフィール

懲戒処分のリスク

また、刑事上のリスクと民事上のリスクに加え、職場でのいじめには懲戒処分を受けるリスクがあることも見逃せない。

上司や先輩といった仕事の上での有利な地位を利用した職場でのいじめは、パワハラに当たる。被害者がパワハラを会社に訴えれば、会社としてはこれに対応せざるを得ない。会社がきちんとした対応をせずにパワハラを放置してしまえば、会社が職場の安全な環境を守る義務を怠ったことになってしまい、そのような義務違反について会社が被害者から責任を追及されてしまうからだ。いじめの訴えに対し、会社は事実関係を調査し、いじめの事実が確認さられパワハラが行われたということになれば、加害者はけん責や出勤停止、果ては懲戒解雇のような懲戒処分を受ける可能性が出てくる。

 

本件では、東須磨小学校の校長は、加害者の教師たちには今後子どもに対する指導をさせないと発言しており、市の教育委員会も処分を検討しているという。前述の本件いじめ行為の悪質性や被害の大きさに加えて、被害者が被害届を提出し刑事事件として警察の捜査の対象になること、加害者が教員といういじめをしないように生徒を指導するべき立場の存在であることや事件が大きく報道されてしまったことに鑑みれば、加害者たちへの処分は厳しいものになるはずだ。最も重い懲戒処分である懲戒解雇となる可能性もある事案だと考える。

パワハラ認定のその後

勿論、職場いじめの事実が認められパワハラがあったと認定されても、必ずしも最も重い懲戒処分である懲戒解雇がなされるとは限らない。

しかし、処分そのものは軽いもので収まったとしても、職場でのいじめをパワハラと認定されこれを原因とする処分を受けたという事実は、加害者のその後のキャリアに暗い影を落とすことになる。

会社としては、職場でのいじめを行うような従業員に、多数の部下を指導するような責任ある地位を与えるわけにはいかない。部下に対する指導の過程で再度いじめが行われパワハラだということになれば、会社が責任を問われる可能性が増すからだ。そうすると、職場でのいじめをパワハラだと認定されてなされた懲戒処分の経歴が、人事評価の上でマイナス要因となることは想像に難くない。

どうだろうか。いじめは、努力して築いた職業人としてのキャリアを台無しにする価値のある行為だといえるだろうか。