「霜降り・脂至上主義」の和牛が「赤身肉」へのシフトに苦戦するワケ

スーパーに「売れない」と言われ…
松岡 久蔵 プロフィール

今回の検討会の結果を受けて、ある宮崎県の畜産農家はこう話す。

「県有牛の管理については、絶対に県外に出さないような体制ができているので、『鎖国している』と揶揄されるほどです。ここまで厳格に管理するようになったのは、1991年に、全国的に評価の高かった宮崎県の種牛の精液証明書が偽造されたことが発覚したからです。

実はこの種牛、今の農林水産大臣で宮崎県選出の江藤拓衆議院議員の父、故・江藤隆美元建設相の名前からとった『隆美』だった。県はオリジナルブランドの信頼回復のために、徹底的に管理を強化しようという流れになりました。

ただ、どこの自治体にも宮崎県のような対策ができるわけではありません。ブランド牛の精液の流通が自治体の内部で完結していればいいですが、有名なブランド牛がない自治体の場合、どうしても県外から受精卵や精液を買うことになるので、全ての流通の流れを把握するのは不可能です。

バーコード管理などでシステムを増強するのも、費用がかかりすぎますし、現在でも人手不足の人工授精所にさらなる負担をかけるのは、現実的ではないと思います。それに、今回の徳島の農家もお金に困って犯行に及んだということですから、畜産農家の高齢化が進むと、同様の事例は増えてくると考えるべきでしょう」

 

流出してしまったトラウマ

政府や業界団体が流出防止に血眼になっているのは、2000年よりも前に合法的にアメリカや豪州に渡った和牛が「WAGYU」となり、現地や東南アジアのマーケットをさらった過去がトラウマとなっているためだ。

現在の和牛は、かつてとは品質的に全くの別物といっていいほど質が高いため、政府や業界が流出を何としても阻止したいと考えるのは自然だろう。現地で質の高い和牛が飼育されるようになれば、多大な損失は避けられない。

しかし取材を進めるにつれ、当局が本当に恐れているのは、今回の事件のような「闇ルート」ではなく、むしろ外国との「正規ルート」が開かれることだとわかった。農水省関係者は声を潜める。