「霜降り・脂至上主義」の和牛が「赤身肉」へのシフトに苦戦するワケ

スーパーに「売れない」と言われ…
松岡 久蔵 プロフィール

長年、日本人にとって牛というのは農耕牛、今で言うトラクターみたいなもので、食べるのは動かなくなったとき、というのが基本だったのです。自由化以前の牛肉は主に西日本では食べられていたものの、全国的な広がりはありませんでした。

2000年を境に海外からの肉の輸入が増加し、安い牛肉や豚肉、鶏が手に入るようになって、牛肉の脂肪交雑もその頃から本格化していきました」

 

サシを増やすことが「正義」だった

「サシ至上主義」といっていいほど霜降りにこだわってきた国内畜産業界だが、最近は変化も起きているという。宮崎県の畜産業者はこう解説する。

「確かに和牛の売りはサシではあるのですが、それ一辺倒だとボリュームゾーンを豪州産や米国産に取られ過ぎてしまい、スーパーなどの量販店のマーケットを失ってしまうので、幅を持たせることが急務となっています。

和牛登録協会が主催する『和牛のオリンピック』と言われる品評会・共進会でも、2022年大会から審査基準として脂肪の『質』についての評価を採用するなど、サシの多さ以外のところで強みを出す方向に舵を切りました。

ただ、ここ30年はずっとサシを増やすことが『正義』だったわけで、一度固まった価値観を転換するのは簡単ではありません。サシ至上主義が広まりすぎた影響で、赤身肉を増やす方針で品種改良しようにも、支障を来たすほどになっているのです」

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今後、日本の和牛畜産農家は、高齢化が進む中で「世界トップブランドとしての和牛」を守る一方、「少し贅沢な、庶民に親しまれる赤身肉」の開発にも向かわねばならない複雑な局面を迎える。和牛の真価が試されるのは、これからと言えそうだ。