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「霜降り・脂至上主義」の和牛が「赤身肉」へのシフトに苦戦するワケ

スーパーに「売れない」と言われ…

おいしいけれど、脂っぽい?

「日本の財産」ともいわれる「和牛」だが、日常的に手が届く価格のものは年々減っているようにも感じられる。そもそも和牛は、日本人にとって身近な食品と呼べるのだろうか? 豪州産や米国産に比べて高価な上、「確かに美味しいが、脂っぽい」と敬遠される面もあるのが実態だ。

農畜産業振興機構の調査によると、2018年度の牛肉の小売価格(かた肉、100gあたり)は米国産279円に対して、和牛は809円と2・5倍以上も高い。

原因は、畜産農家の高齢化に負う所が大きい。和牛は育てるのに時間がかかるため、廃業する農家が増えれば、需要にあった供給が保てなくなり、価格が上がるというわけだ。スーパーから「高すぎて売れない」という理由で契約を切られる農家も増えているという。

また、和牛の売りとされる「サシ」を生かすには、すき焼きなどで食べるのが一般的だが、近年の単身世代の増加も国内需要拡大の障害となっている。

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一方、富裕層や高級レストランからの和牛の引き合いは強い。近年のインバウンド観光客の増加にともなうもので、食品流通統計によると、18年の1kgあたりの枝肉相場(東京市場、和牛去勢、最高のA5ランク)は10年前の約1・2倍、2818円に上昇している。

和牛が一般消費者から縁遠い存在になる一方、米国産や豪州産の牛肉は手ごろに牛肉を食べたいニーズをつかみ、確実に裾野を広げている。近年では「いきなり!ステーキ」といった牛肉主体の外食チェーンも人気を博し、空前の肉ブームとなっているが、それを支えているのが両国産の牛肉というわけだ。赤身で脂身が少ないため、ステーキに向いている点も強みとなっている。

 

高級食材としての和牛の歴史は、一般に想像されるより短い。鹿児島県のある畜産業者がこう解説する。

「実は、和牛が本格的に脂肪交雑(サシ)の研究開発に入ったのは、日米の間で牛肉の自由化が始まった1991年以降の話で、米国産牛肉に対抗するにはどうしたらいいかと考えてのことだったのです。

日本の畜産業界が『和牛は日本の財産』というのは、国内品種の交雑のみで品種改良をしてきたことに由来するのですが、現在知られているような質の和牛は、2000年以前には神戸牛などほんの一部をのぞいて国内に存在しませんでした。