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意外!ポール・マッカートニーがオーケストラ作品を書いていた!

思わず誰かに話したくなる音楽トリビア

芸術の秋──あなたは何を楽しみますか?

ブルーバックス編集部のお勧めは「音楽」。

フランスには「音楽はすなわち数学」という言葉があるそうで、科学と音楽はとても相性がいいのです。

フランスで最も栄誉ある音楽勲章を最年少受章した作曲家で、マリンバソリストでもあるフランソワ・デュボワさんによる新刊『作曲の科学』が好評です。

同書の監修を務めてくださった井上喜惟(いのうえ・ひさよし)さんによる特別エッセイは、往年の名著の話からはじまります!

【写真】音楽の秋

「時代の空気」をまとった音楽理論の古典

今、手元に2冊の本がある。

1冊は昭和に活躍した音楽評論家、門馬直美氏の『音楽の理論』、もう1冊は私が監修を担当した、フランソワ・デュボワ氏の『作曲の科学』だ。

門馬氏の著作は数十年前に一度、手にした記憶があり、今回改めて目を通してみた。この本の初版は昭和30年(1955年)。平成3年(1991年)に改訂されているとはいえ、なんとすでに64年前の本だ。

『音楽の理論』というタイトルどおり、「音程と音階」から「対位法」にいたる、理論書の体裁である。労作でもあり、教育者が授業の参考にするには非常に良い参考書といえるだろう。

この本では、初版刊行当時の一般のクラシック音楽リスナーが、身近でレコードなどが入手しやすかったであろう、バッハからブラームスあたりまでのドイツ音楽やショパンを例にとり、詳細な解説をおこなっている。執筆当時の日本の音楽界を取り巻く時代の空気が、これらの選曲や解説から読み取れるのではないだろうか。

そういう意味でも、音楽に関心のあるみなさんにはぜひ一読をお勧めする。

【写真】初版刊行当時のクラシック音楽リスナーを取り巻く時代の空気が読み取れる
  初版刊行当時のクラシック音楽リスナーを取り巻く時代の空気が読み取れる photo by gettyimages

「時代の最先端」を走った戦前の日本人音楽家

さかのぼって日本の音楽界を見渡してみると、ベルリンでブルッフに学んだ山田耕筰や、同様にベルリンで大指揮者エーリッヒ・クライバーや作曲家のシリングス、またパリではダンディに作曲を学んだ近衛秀麿のような、日本の戦前の音楽界を牽引した音楽家たちの存在が際立っていた。

 

特に近衛は、マーラーの交響曲第4番を世界初録音するなど、ある意味で時代の先端を走っていた。また、山田や近衛と同様、高木東六、池内友次郎ら多くの音楽家が、戦前からパリに渡った。画壇でも、藤田嗣治のように1913年にはすでにパリに渡り、エコール・ド・パリを代表する画家となった人物もいる。

マーラーの弟子で指揮者であるプリングスハイム、ブゾーニの弟子のレオ・シロタ、ラフマニノフの後輩であったクロイツァーらのピアニスト、スクリャービンの親友だったロシアの名ヴァイオリニスト・モギレフスキーなど、戦前・戦後を通じて、多くのユダヤ系の超一流音楽家たちが日本で教育活動をおこなっていた。