雪深い冬が長く、食品を保存する必要のあった秋田では幅広い発酵食文化が発展してきました。秋田の女性のツヤ肌は、からだに優しい発酵食の賜物です。

秋田の発酵食文化を体験するには、何はさておき「味わう」ことが第一歩。麹たっぷりの漬物に、甘酒、日本酒……。おいしい発酵食を味わえるお店を紹介します。

季節や土地、暮らしを味わう
【旬菜みそ茶屋くらを】

甘酒を使ったナス漬け。「三五八」という塩麹で漬けられることも。嚙むとナスのうまみが口いっぱいにじゅわっと広がる。〈くらを〉では定食のなかの一品として提供。

「この地域で発酵といえば麹。素材そのものの味を引き出してくれるから、調味料の味付けに頼らなくなるの」

そう話すのは、〈旬菜みそ茶屋くらを〉の女将、鈴木百合子さん。同じ町内にある、大正7年創業の米麹店〈羽場こうじ店〉の次女として生まれ育った。日本に数軒しか残っていない、昔ながらの「麹葢製法」を何十年と守り続けてきた、貴重な麹店だという。

譲り受けた旧勇駒酒造の暖簾もそのまま残されている。

県南部の横手市増田町は、内蔵の町だ。雪深い冬が潤沢な水をもたらし、おいしい湧き水による酒造りも盛ん。酒蔵が街並みに溶け込み、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された。そんな美しい景観とともにある〈くらを〉の建物は、十数年前まで勇駒酒造の酒蔵だった。店内奥の「宝暦蔵」は江戸時代後期に建造されたもの。店舗も大正時代に建てられた入母屋造りだ。

地元のお母さんたちは麹づかいが巧みで、素材のうまみを引き立てるのが上手。酒の仕込み水にも使われていた井戸水を用いる。

ここで調理を担当するのは、農家でもある地域のお母さんたち。旬の食材に詳しく、収穫した野菜はメニューにも登場する。ご飯に味噌汁、主菜、副菜、お漬物。素朴な味わいのこういうごはんこそ、現代では縁遠い存在になっているのかもしれない。麹や味噌、醤油から一つひとつの素材がうまみを引き出され、じんわりと優しい味がする。

米麹から作った甘酒で、この地域では「あまさけ」と呼ばれている。酒粕を使っていないので、アルコールが含まれておらず、優しい口当たりが特徴。かつては集落ごとに麹屋があったといわれるほど、麹はこの地域と切り離すことができない存在。

「彼女たちは、発酵食を作っているという意識もないくらい、とっても自然に麹を使いこなしているんです。ここでは、麹や発酵が暮らしそのものなの。麹を使った料理は見た目が地味だけど、口の中だけじゃなくて、内臓までおいしいって言っているみたい」

日替わりのランチメニューは1種類。発酵料理を数品に、がっこ(漬物)、味噌汁、甘味など、充実の内容。¥1000。

増田の人たちにとって、暮らしとともにあった麹。塩麹がブームになったとき、自分たちが当たり前に食べてきたものが脚光を浴びることに驚いたと鈴木さんは話す。

「私たちが食べているあの塩麹が!?って。でも、みんな肌がきれいだし元気。きっと発酵食を自然に取り入れているからだね。ここでは流行にのらずに、麹が台所にある生活を守っていきたい。そのためにも、発酵を取り入れたごはんのおいしさを発信できる拠点にしていきたいと思っています。それが麹屋の娘のつとめだね」

〈羽場こうじ店〉の「㐂助みそ」で作った味噌汁。この日の具は豆腐と塩くじら、ミズ、食用菊入りの「くじら汁」だった。季節の野菜、山菜、きのこなどを使い、いつも具だくさん。

旬菜みそ茶屋くらを
麹料理と発酵の教室も開催(全6回、2ヵ月コース)。現代の食卓に合わせた麹の使い方も学べる。
秋田県横手市増田町増田字中町64
☎0182-45-3710
営業時間:10:00~16:00(ランチ11:30~14:00)
定休日:水・木