中国の中学校で「中3が中2を4階から放り投げた」事件の深刻な顛末

被害者が加害者をいじめていた…?
北村 豊 プロフィール

被害者が加害者をいじめていた

この事件の経緯を改めて整理すると次の通りとなる。

1)加害者の黄某は16歳の中3で、身長190センチメートル、体重100キログラム以上の巨漢であった。これに対して、被害者の韋某は14歳の中2で、身長159センチメートルという普通の体格であった。安陽中学の校舎は4階建てであり、中3の教室は4階にあり、中2の教室は2階と3階にあった。

2)事件が起きたのは月曜日で、土・日を実家で過ごして早朝に学校の宿舎へ戻った学生たちが校舎へ移動して1時間目が始まる直前で、黄某と韋某の2人は2階か3階のトイレで顔を合わせ、韋某が黄某に侮蔑的な言葉をかけたことで口論が始まったものと思われる。その後2人が4階に上った理由は分からないが、恐らく授業が始まるので教室へ行こうと4階へ上った黄某を韋某がしつこく追いかけたのだろう。4階の廊下で韋某がしつこく黄某に絡んだために、いつも韋某にいじめられている黄某は堪忍袋の緒が切れて、無我夢中で韋某を捕えると担ぎ上げて4階の手摺から地面めがけて放り投げたものと思われる。この時、黄某の頭の中は真っ白で、韋某を投げ捨てたことすら覚えていなかったのではなかったか。

 

3)重傷を負った韋某は肝臓や肺を含む多くの臓器が損傷を受けただけでなく、多くの個所に骨折があり、脳出血と脳震盪の症状があり、ICUの重傷看護室に収容されているが、重傷看護室の入院費用は1日1万元(約15万円)と高く、今後の治療には少なくとも40万元(約600万円)かかることが予想されるという。

4)韋某の父親(47歳)は建築現場の臨時工で、月収は3000元(約4万5000円)しかなく、これで一家6人(夫婦と韋某を含む4人の子供)が暮らしている貧困家庭であり、韋某の家には医療費を負担する経済的な能力は全くないのが実情である。一方、加害者である黄某の家は4人家族(夫婦と黄某とその弟)であるが、夫婦2人の共稼ぎなので、経済的には多少の余裕はあるが、韋某の医療費を捻出するのは1.5万元(約22.5万円)でも困難で、あちこちから借金してかき集めたのが実情である。

5)中国の刑法では刑事責任年齢を満16歳と規定しているので、満16歳になっている黄某は刑事責任を問われることになるはずである。ここで重要なのは、県教育局が通報の中で述べた「跌落(落下した)」か、あるいは「摔落(投げ落とした)」かのいずれが事実かである。落下したのであれば故意ではないと言えるが、投げ落としたのでは故意ということになる。

すなわち、中国の刑法でいう、「過失致傷罪」となるか、「故意致傷罪」となるかによって量刑は大きく異なって来る。本事件は裁判で争われることになれば、当然ながら韋某の黄某に対する陰湿ないじめが論点となり、黄某の量刑には手心が加えられることになるだろう。

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