ジェフ・ベゾス肝いり! Amazonが「謎の通信規格」をつくる理由

Alexaの陰で進行する秘密実験とは
西田 宗千佳 プロフィール

「謎めいた通信規格」が登場

このようなハードウエア群に加え、Amazonはもう1つ、非常に重要な発表をしている。

通信規格に関するものだ。

 

Amazonは2020年に、「Ring Fetch」とよばれる、ペット犬のトラッカーを発売する。あらかじめ設定されたエリアの外にペットが出てしまったり、遠くまで行って帰ってこないなどの場合に、現在地を確認して迎えにいけるといった使い方を想定している。

この機器で用いるのが、新しい通信規格である「Sidewalk」である。

Sidewalk2020年にはペットトラッカーの「Ring Fetch」を発売する。じつはこの端末に、新しい謎の通信技術「Sidewalk」が使われている
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Sidewalkについて、Amazonは詳しいことを発表していない。だが、AmazonのCEOであるジェフ・ベゾス氏は、この規格にかなりの自信をもっているようだ。

ジェフ・ベゾスAmazonのジェフ・ベゾスCEO(左)。Sidewalkには、かなり強い自信をもっているようだ
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「いままでとはまったく違う通信技術だ。この技術の登場により、既存技術では埋められないギャップが存在したことが明らかになるだろう。業界にオープンに公開し、IoTの世界を変えたい」

ロサンゼルスでおこなわれた秘密実験

ベゾス氏がそう語る「Sidewalk」は、次のような特徴をもっている。

まず、Wi-FiやBluetoothよりも「遠くに飛ぶ」こと。最低500m、うまくいけば「1マイル(1.6km以上)飛ぶ」(前出・ラウシュ氏)もので、より広いエリアで使用可能だ。

次に、「メッシュネットワークを構成する」こと。メッシュネットワークとは、通信機器どうしが連携しあい、網の目のように広い通信エリアを全体で構成することをいう。

1つの通信機器では500m程度しか電波が届かなかったとしても、機器どうしが連携することで、「面」としてのカバーが可能になる。Amazonはすでに、秘密裏にロサンゼルス近郊でSidewalkのテストをしているが、ロサンゼルス全体(ほぼ関東平野と等しい約1300平方km)を、わずか700個のデバイスでカバーできているという。

Sidewalk謎の新通信規格「Sidewalk」は、関東平野と同じ広さをもつロサンゼルス全体を通信領域にしてしまう。それに必要なデバイスの個数は、「たった700個」だ
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Sidewalkにはさらに、「消費電力が低い」という特徴もある。前出の「Ring Fetch」は、バッテリーが「年単位で持続する」としている。

次なるAmazonの姿は?

通信には900MHz帯の電波を使うこと、通信速度は携帯電話ネットワークやWi-Fiほど速くないこともわかっている。

これらの要素は、IoT向けに現在、開発が進んでいる「LPWA」とよばれる通信方式に近い。だが、Amazonは「LPWAと同じではない」とだけコメントしている。

2020年には技術の詳細が公開され、広く利用が可能になるとのことだが、なんとも謎めいた存在ではある。

しかし、このような技術をAmazonが欲している理由は明白だ。

彼らは現在、監視カメラなどのビジネスを加速している。広大なアメリカにおいては、家の中だけでも、Wi-FiやBluetoothでは通信距離が足りないことがある。街中で使うとなればさらに問題だ。

一方で、単純なセンサー情報のように、ごく少ないデータを送る用途はさらに増えていく。

Amazonとしては、ホームネットワーク機器にSidewalkのような技術を組み込むことで、もっと多様な価値を生み出そうと考えているのだろう。それは、Alexaのような音声アシスタント機能の価値を高めることにもつながっている。

音声アシスタントの価値は、データの量と、それを活用できるサービス・機器の存在で決まるからだ。

Amazonは着実に、ハードウエア企業としての力をつけている。この先には、ネットワーク企業としてさらに新しい特性を身につけようとしているのかもしれない。

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