マスコミの「両論併記」が、世間に与える「意外な悪影響」

「バランスを取ろう…」の落とし穴
堀内 進之介 プロフィール

読者は何に注意すべきか

目下の情報流通市場においては、どの道、視聴者自身もリテラシーを身に付けておくに越したことはない。それは何も専門知識に習熟することばかりを意味するのではなく、メディア報道の「形式」を見極めるだけで事足りることもある。これまで述べてきたように形ばかりの「両論併記」には注意が必要だが、ある研究はさらに興味深い発見をしている。

 

それによると、懐疑論者の無根拠な意見を非難するために取り上げるメディア報道では、その意見が誰のものか、どこで述べられたものかなど、いわゆる出典がしっかりと明記されるが、懐疑論者の意見に好意的なジャーナリズムやメディアは、懐疑論者の主張を支持するものの、その出典を明示するのは避ける傾向にあるという。

主張ばかりで出典のない記事は、その著者の肩書がどうであれ、鵜呑みにすべきではないということだ。このような傾向がすべてに当てはまるわけではないが、出典を確かめるというのは、メディアリテラシーの基本にして、堅実な方法だということは確かだろう。

より望ましい転換は、懐疑論者の無根拠な意見は取り上げる文脈を十分に吟味し、可能な限り議論の別様な側面を探し、それを取り上げる努力をすることだろう。正義を司る女神ユスティティアが手にするべきは、物事の軽重を正しく測る天秤であって、決して「偽りの天秤」ではないのだから。