マスコミの「両論併記」が、世間に与える「意外な悪影響」

「バランスを取ろう…」の落とし穴
堀内 進之介 プロフィール

バランス規範も情報流通市場も、懐疑論者の無根拠な批判・主張・意見などが、科学的なコンセンサスを得た合理的な議論とあたかも競合するような印象を与える「偽りの天秤」を、すなわち「両論併記」という形式を、広く蔓延させる培地になるのだ。

 

無根拠な意見を「非難」することにもリスクがある

しかし、こう述べても、懐疑論者の無根拠な意見を非難するために、あえて取り上げるジャーナリストやメディアもいるのであって、それらは、ある種の体質や怠慢、そして功利的な関心に基づいて取り上げられたものとは、区別されるべきだと思う読者もいるだろう。

確かに、取り上げる動機のレベルでは、たとえば善意と悪意とを区別することができるかもしれない。とはいえ、それですら視聴者に悪影響をもたらすという点では、善意か悪意かは問題にならない。

事実、懐疑論者の無根拠な意見を支持するメディア報道が耳目を集めれば、それを牽制し非難しようとするメディア報道も、増加する傾向にある。その結果、懐疑論者の無根拠な意見は、それを支持するメディアと非難するメディアの双方において、同程度に取り上げられるという状況が生じ、何れにしても懐疑論者の無根拠な意見が「量」の面でも、警告者の根拠のある主張と競合するという印象を視聴者に与えてしまうことになる。

懐疑論者の無根拠な意見を非難するという、善意から為されたことであっても、その帰結は必ずしも好ましいものではないのだ。

ここから言えることは何だろうか。それは、懐疑論者の無根拠な意見や警告者と懐疑論者の対立に、ジャーナリストやメディアは固執するべきではないということだ。