10月12日に台風19号が日本を直撃し、最高時12の都県で大雨特別警報が発令された。交通機関が停止し、百貨店やスーパー、コンビニエンスストアでも臨時休業となる店が相次いだ。多くのイベントが中止となり、緊急報道番組のために多くのテレビ番組も放映日が変更となった。松井秀喜氏が出演している『とんねるずのスポーツ王は俺だ!!』(テレビ朝日 12日夜9時より放映予定だった)もその一つである。少しでも早く安心安全な生活に戻れるように祈りたい。

松井秀喜氏は巨人軍の5年ぶりリーグ優勝とともに改めて挙動が注目されている。ファンや報道陣に対するフェアな姿勢や、社会貢献にも力を注いでいることで「人格者」としても有名だ。そんな松井氏がどのように育ってきたのかを綴った一冊が、講談社文庫『ひでさん〈松井秀喜ができたわけ〉』だ。

前回は、身体能力も身体の大きさも人一倍優れて生まれた松井氏が、小学1年生のときに悔しい思いをしたエピソードを本書より抜粋掲載した。今回は、そんな松井氏が持つ強い闘争心が発端で起きた幼き頃の「ある事件」を、講談社文庫『ひでさん〈松井秀喜ができたわけ〉』から特別に抜粋掲載しFRaU WEBでご紹介。松井氏の強さのベースにある「親子間の信頼関係」はどのように育まれてきたのか、松井家の子育ての根底にある考え方や親の子への接し方から学んでいきたい。

連載第1回
「松井秀喜『邪魔になるからやめてほしい』少年野球で挫折した過去」はこちら

親父はいつも見守ってくれている

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9月に入ると残暑も落ち着いてきて、根上町はすっかり秋の気配に包まれる。家の周りにある田んぼには、稲の穂が実り一面が黄金色になりつつあった。

――この調子だと、9月の中頃には稲刈りだ。

秀喜にとって、田植えと特に稲刈りは、ワクワクするイベントだった。ご飯が好きだから……というのももちろんある。それともうひとつスペシャルなこと。稲刈りの後の田んぼは、雪が降るまで、〈ボクたちの野球場〉に変わるのだ。稲刈りが、野球シーズンの幕開けだった。

稲を刈った後、切り株が残っている田んぼで行われるのが「三角ベース」だ。秀喜は楽しみに待ち望んでいた。「三角ベース」は、2塁がないから6人いれば十分にできた。少人数なので毎試合出られる。メンバーは、小学5年生の兄の利喜と同級生、そして、1年生の秀喜だ。

秀喜は三角ベースがめちゃくちゃ好きだった。毎回ゲームに出られるし、思いっきり打って思いっきり走る。何の制約もない。

――野球ってこんなに楽しいものなんだ。

ということを実感できた。それに何よりも兄に負けたくないという闘争心が、秀喜の積極的な行動に拍車をかけた。

利喜達も秀喜の参加は大歓迎だった。年下だからといって足を引っ張るわけではない。対等に遊ぶことができた。それどころかむしろ脅かされるプレーの連続で、煙たいと思ったことすらあった。利喜達からしてみれば、力のある秀喜とはやりがいがあった。