「日本のアニメ」にヨーロッパの人が惹かれる理由

米アニメにはない“さりげなさ”
此花 わか プロフィール

感情表現の“さりげなさ”が近い

――『エセルとアーネスト〜』は『スノーマン』の原作者のレイモンド・ブリッグズが自身の両親の視点から激動の20世紀を描いた作品ですが、本作をはじめ、ヨーロッパ製のアニメは芸術性が高く、大人も楽しめる作品が多い印象があります。ヨーロッパの人から見て、日本のアニメはどう映っているのでしょうか。

 

ウィリアムズ:物語性においてイギリスを含むヨーロッパと日本のアニメはよく似ていると思います。例えば、高畑勲監督の作品に出てくる登場人物は“善”と“悪”に二分化されておらず、グレーな部分を抱える複雑な思考の持ち主が多い。絵が違っても、ヨーロッパと日本のアニメは深い人物描写をしていると思います。その反面、アメリカのアニではより分かりやすい人物描写や物語性を押し出しているような気がします。

アメリカのアニメが感情をダイナミックに描くのに対し、ヨーロッパのアニメは感情を“さりげなく”描くことが求められることが多い。人物のボディランゲージが非常に繊細なんです。その点も日本と共通するところかもしれません。『エセルとアーネスト〜』でも、エセルとアーネストがお互いに対して抱く静かな、でも強い愛情を、繊細な顔の表情や動作でさりげなく表現することに心を配りました。

『エセルとアーネスト ふたりの物語』より

――そういった繊細さがあるからこそ大人も楽しめるのでしょうね。本作もそうですが、ヨーロッパのアニメは体制批判をしているものが少なくないですよね。

ウィリアムズ:体制批判もそうですが、人間のもつ普遍的な憂鬱や、生と死の概念を表現した作品がヨーロッパのアニメには多いかな。私が過去に制作に参加した『レッドタートル』や『イリュージョニスト』もそうですし……今、ハッピー・エンドのヨーロッパのアニメを一生懸命思い出そうとしているんですが、全然思いつかない(笑)。ちなみに、私が最初に観たブリッグズのアニメ作品『スノーマン』もかなり悲劇です。

でも、人間の複雑さを描いているからこそ、観客はそこに自分自身を重ねられるのではないでしょうか。人間の生活に苦しみはつきものですから。

『スノーマン』はレイモンド・ブリッグズの人気絵本をアニメ化したファンタジー作品