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「石油はもうすぐ枯渇」は大ハズレ…未来予測が当たらない深い理由

エリートたちが知恵を絞っても当たらない
「石油とガスは間もなく枯渇する」「都市の大気汚染が深刻化」など、私たちの身の回りには、これまで騒がれながらも的中しなかった未来予測があふれています。なぜ未来予測は外れてしまうのか、その解説を上田篤盛氏の著書「未来予測入門」からご紹介します。

実は「外れるのが当たり前」?

人間は神様ではないのだから、未来の出来事を直観的に予知することなどできない。したがって、我々が未来を予測しようとするならばまずデータを集め、そのデータを分析するという方法に頼るしかないのだが、仮にこの手法を理想的にやり遂げたとしても、未来を予測することは本当に難しい。

なぜなら未来とは、ブラジルの1匹の蝶の羽ばたきがテキサスで竜巻を引き起こすという、いわゆる「バタフライ効果」の喩えのように、ごく些末なひとつの変化によって全体として大きく変わりうるものだからである。

経営学者のピーター・F・ドラッカーは、「われわれは未来について、二つのことしか知らない。一つは、未来は知りえない。二つは、未来は、今日存在するものとも今日予測するものとも違う」『創造する経営者』ダイヤモンド社刊)と述べている。

筆者が子どものころ読んでいた少年漫画誌には、よく未来の街や乗り物などを想像で描いたイラストが載っていた。こうした絵は「子ども向け」ということもあり、ここで描かれた予測がほとんど当たっていないからと言ってあげつらうのは大人げないと思う人もいるだろう。ただ私に言わせれば、未来予測なるものは大人向けであろうとことごとく外れてきたといってもいいくらいのものなのだ。

比較的予測しやすいと言われる人口動態もその例外ではない。米国では1920年代に出生率が低下し始め、1930年代まで下がり続けた。そのため1935年には、アメリカの人口は30年後に3分の2程度まで減少しているだろう、と予測された。しかし、第二次世界大戦が始まるとアメリカの若い男女たちの結婚率が急に上がり始めた。さらにそれにつれて出生率も大幅に増加し、戦争直後の1946年にはベビーブームを迎えたのである。

市場規模に関する予測なども大きく外れた事例はたくさんある。1982年には、当時アメリカで最大の電話会社だったAT&Tが、コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーに「2000年時点の携帯電話の市場規模を予測してほしい」と依頼したことがある。

この依頼に対してマッキンゼーは、最終的なレポートで「90万台」と回答したと言われている。だがこれが実際にどうなったかはあらためて言うまでもないだろう。携帯電話の市場規模は2000年までにあっさりと1億台を突破、3日ごとに100万台が売れる状況になり、2015年には、AT&T株がアメリカ経済を代表する30銘柄を厳選したダウ工業株30種平均からも姿を消した。その交代劇は皮肉なことに、スマートフォン「アイフォーン」のメーカーであるIT大手アップルと入れ替わる形だった。

このマッキンゼーの例に限らず、知性もあり情報にも通じたはずの人たちが未来予測に挑み、結果として無様な失敗を喫した例は枚挙にいとまがない。

三菱総合研究所「政策・経済研究センター」の主席研究員・白戸智氏が2016年1月に発表したセミナー資料「三菱総研が捉える社会シフト――予測できない未来を捉える」によれば、シンクタンク機能も持っていることで知られる英国の代表的な経済誌『エコノミスト』が、2012年に『2050年の世界』と題して40年後の世界がどうなっているかを予測している。

三菱総研の報告が興味深いのは、その際に同誌が1970年代において社会の中で言われていた未来予測が、40年後の同誌刊行時点でどうなったかを検証していることだ。その結果は上の表のようなもので、ほとんど「惨敗」と呼ぶしかないものだった。