もちろんせっかく作家になったのだから「もっと売れてたくさんの人に読まれたいな」という欲求はありますし、何本も小説を書いていく中で「タイムテーブルは先に作らないと同じ人間が複数の場所に同時に存在してしまうぞ」とか「主要人物の名前を難読にすると話が全然頭に入らないな」とか、たまに我ながら上手く書けたシーンについて「前の小説で間違えたやつが出来た!」と一人進研ゼミ状態を楽しんだりもしています。
何をやっても「どうせ迷うし」と開き直っている節もありますが、これは同時に「そのうち何か思いつくだろう」という無根拠な自信を持っているとも言えます。それも散々迷ってきたからこそだと思うのです。
ところで、しばらくラノベから離れていた私ですが、昨年久しぶりにライトノベルレーベルから本を出しました。『僕は君に爆弾を仕掛けたい。』という小説で、これは「書いてみたけど一般文芸ではないな」と悩んだ末に「あ、ラノベだ!」と思い出して、出版に至った一冊です。
つまり、自身のキャリアの中での迷子の足跡が私に選択肢を増やしてくれたことで本になったと言えましょう。そんなわけで、迷うことが自分の武器……とはさすがにそこまで厚顔ではありませんが、もし書店で私の本を見かけたら「あ、迷子だ」とでも思っていただけたら幸いです。