写真:矢本祥子

市場半減の出版不況でも、紀伊國屋書店は「11期連続黒字」のワケ

カギは37店舗もの海外展開にあった
書店業界はいま逆風だ。1990年代に約2万3000店あった書店数は半減。紙の出版販売額もピークだった1996年の2兆6563億円から2018年の推定額は1兆2921億円と半減している。
しかし、紀伊國屋書店は、その中にあって一人気を吐いている。紀伊國屋書店の数字を見ると、その堅調ぶりがよくわかる。直近2018年8月期の単体売上高は1031億4400万円(連結では1221億9700万円)、11期連続で黒字。多少の利益増減はあるものの堅調に推移している。市場を大きく縮小させている書店業界にあって、しぶとく数字を維持している。
なぜ、厳しい書店業界にあって、紀伊國屋書店は手堅く業績を維持しているのか。そのカギが海外展開にあるのだ。

ジム・ロジャーズ氏のトークイベントに150人が殺到

「ここは1日いても飽きないな」。これは、筆者が紀伊國屋書店シンガポール本店を訪れた際の第一印象だ。

紀伊國屋書店シンガポール本店は、シンガポールの中心街・オーチャードロードに建つ日系商業施設「Takashimaya Shopping Centre」の4階にある。その広さは、1070坪。8フロアと別館2フロアで展開する紀伊國屋書店新宿本店に迫る売場面積を1フロアで展開していると言えば、その広大さをイメージしていただけるだろうか。

店内には、英語、中国語、ドイツ語などさまざまな言語で著された本や雑誌、そしてコミックを中心に、日本では見かけないキャラクターをあしらった文具や雑貨など、色とりどりの商品がそこかしこに陳列されている。しかし、上手にゾーニングされているせいか、ごちゃごちゃ感はない。むしろコーナーを曲がるたびに現れる新しい光景が楽しい。

折しも筆者がシンガポール本店を訪ねた日は、世界的投資家であり、12年前にアメリカからここシンガポールに居を移したジム・ロジャーズ氏のトークイベントが、店内の一画で開催されていた。氏の新刊『日本への警告』(講談社+α新書)の出版を記念したイベントだ。

ゆうに150人はいるだろうか、立錐の余地がないほど集った人たちが、投資に必要な開拓精神は自国にとどまっていては育まれないと語る氏の話に熱心に耳を傾けている。質問も活発に飛び交い、会場は一体感に包まれている。

 

紀伊國屋書店シンガポール本店は、さながら世界中のコンテンツが一堂に会すテーマパークのように、取り扱う商品も集う人たちも多彩で活気にあふれていた。地元の人たちから親しみを込めて「Kino(キノ)」と呼ばれるこの店は、紀伊國屋書店の海外展開における旗艦店だ。紀伊國屋書店全店で見ても、新宿本店、梅田本店に次いで、3番目の売上を誇っている。