2019.10.13
# 立ち読み

体験ギフトで感動を! 「STAR分析」が明かすビジネスの秘訣

「ソウ・エクスペリエンス」の戦略とは
前野 隆司 プロフィール

本題に入りましょう。みなさんは、贈り物を選ぶとき、どんなことを大切にしていますか? 家族や大切な人、お世話になった人など、それぞれの顔を思い浮かべながら選ぶ時間そのものが、豊かな時間ではないでしょうか。

先日、ある男性から贈り物をいただきました。数年前、その男性が新規ビジネスを始めて間もない頃、私が彼を応援したことに対して、「いつか恩返しをしたい」と思い続けてくれていたそうです。そして、いよいよ利益が出始めたということで「やっと、先生にお返しができるようになりました」と、私のもとを訪れ、素晴らしいプレゼントをくれたのです。

包みを開くと、一見、洗練された本かと思うようなカタログが現れました。そのカタログには、陶芸やダイビング、クルージングといった、さまざまな「体験」が掲載されていました。贈られた側は、何十個もある体験の中から、挑戦してみたいアクティビティを選び、実際に体験します。つまり、体験そのものがギフトとなっているのです。

ソウ・エクスペリエンスのカタログ

実際にカタログを眺めながら、これは楽しそうだな、これもやってみたいな、と考えを巡らせる時間はとても豊かなものでしたし、想像するだけでもワクワクしました。
私はこの斬新なギフトと、そのユニークなビジネスモデルに感動を覚えました。幸福学の知見から考えても、単にモノをもらうという行為だけよりも、実際に体験をすることのほうが幸福度が高まるからです。

なるほど、そんなやり方があったのか! と思った途端、このギフトを生み出した人に会いたくなりました。

 

体験をギフトにする

体験ギフトを商品として扱うのは、ソウ・エクスペリエンス株式会社。創業者であり、代表の西村琢さんは、高校生の頃から、将来は起業したいと思っていたそうです。そして、大学を卒業した翌年の2005年にソウ・エクスペリエンスを立ち上げました(https://www.sowxp.co.jp/)。

起業にあたり、西村さんは世界の最先端と呼ばれる企業が、どんな新しいことを事業化しているのかを調べました。そのとき、ヴァージングループなどの欧米の企業が扱っていた Experience Giftに出合ったのです。

当時の日本には、体験を贈り物にするという概念はなく、新しい潮流だと感じた西村さんは、日本での事業化を決めました。

多くのスタートアップ企業がそうであるように「当初はまったく売れなかった」と、西村さんは振り返ります。このため、創業からの数年間は、体験ギフトだけでなく、複数の事業を進めていたそうです。

しかし、ここ3、4年は体験ギフトが注目されるようになり、この事業に集中。すると、時代の後押しもあり、急成長したのです。社員数名でスタートした会社も、今や80名の社員を抱える大所帯となりました。

数年での急成長を、西村さん自身は冷静に分析します。

「僕らの仮説として、体験というのは、食べ物やアクセサリーを贈ることと同じように、普遍的な行為として成立するのではないかと思っています。実際に欧米では、このようなギフト分野は確立されているのです。

今の日本は、体験を贈るという行為が、一過性のものではなく、1つの選択肢になりつつある、まさにその入り口にいると思うんです。一時のブームではなく、定着してはじめて、文化として成熟するのではないでしょうか」

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