Photo by iStock
# 地方創生

「昼休みはサーフィンできます」という会社の求人に応募が殺到した話

過疎地こそビジネスチャンスがある

映画「波乗りオフィスへようこそ」をご存じだろうか? 東京のITセキュリティ企業の社長が故郷・徳島県美波町にサテライトオフィスを構え、豊かな自然をウリにエンジニアを募集すると、人が集まっただけでなく、人口減や産業の衰退に苦しんでいた町自体が変わっていく―といった物語だ。

『波乗りオフィスへようこそ』の公式webサイト

話のモデルとなった企業「サイファー・テック」の代表で、現在は地方創生・地域振興事業に取り組む企業「あわえ」も経営する吉田基晴氏(47歳)に話を聞いた。

価値交換型の社会

'12年、徳島にサテライトオフィスを開設したのは、東京で人材難に苦しんでいたからです。人がいなければ仕事は請け負えず、事業の成長も見込めません。しかし人材紹介会社にお金を払っても効果はなく、優秀な方は大手に行ってしまう。

そこで私は「ゲリラ戦」を思いつきました。せっかくネットで仕事ができるのだから、地元に戻って目の前に海が広がるオフィスをつくり「昼休みにサーフィンが楽しめますよ」と訴えたらどうかと考えたのです。

 

結果は、応募数が10倍以上、社員数は4倍に増えました。しかも地元の自治体や町長までもが非常に喜んでくれたのです。

徳島で感じたのは、都会は「貨幣交換型の社会」で、田舎は「価値交換型の社会」だということです。

都会では多くのサービスがお金で買えます。一方で田舎は「鰹が釣れたから飲もう」と誘ってもらえたり、畑で穫れた野菜をもらえたりしますが、草刈りやお祭りの準備も頼まれ、時には「認知症のお婆ちゃんがいなくなったから探そう」といった依頼もきます。

田舎町で野菜や魚をわけてもらえるのは、住民が気前がいいからだけではなく「私たちの交換社会に入りませんか?」と誘われているんです。

美波町の仲間と。同町は新日本観光地100選にも選ばれており、歴史ある門前町を持つ。後列左から5人目が吉田氏

そしてこれには驚くべき効果がありました。社員の充足度が高まったのです。確かに、都会の一人暮らしと、スマホの使い方を教えて鰹に舌鼓を打つ暮らしと、どちらが幸福かは明白でしょう。

私も美波町や周囲の地域が好きです。街と山と海が箱庭のように小さな地域にまとまっていて、午前中は子供と渓流で遊び、午後は海釣り、夜は街で地域の人と交わる、といった一日が過ごせるのは美波町ならではです。