中国と香港、日本と韓国、それぞれを覆う「ヘイト」の構造

中国周縁部でいま同時に起きていること

「ヘイト」の構造

『週刊ポスト』(2019年9月13日号)の「韓国なんて要らない」は明らかにヘイトだった。一方から一方への差別感情にマスコミ自身が乗っかるのはいかがかと思う。韓国メディアが「日本なんて要らない」と言い始めたら問題は日韓の水掛け論になるだけで、紛争や戦争につながる空気を醸成することにもなりかねない。

だが、封じ込めて無視すれば済むものでもなく、むしろ逆効果だろう。ヘイトがエスカレートする過程と構造をしっかりと認識すべきだ。日本社会に充満している韓国に対する不満を肯定する議論にそのまま乗っかるのではなく、煽らず、良し悪しを公正明確に論評することを前提に、テレビや新聞や雑誌で触れる方が社会の安全につながるのではないかと考える。

 

メディアは、ヘイトが過激化する前に、報道することで警鐘を鳴らす。ヘイトが醸成されるリアルな空気や背景、メカニズムや構造を直視し、それを社会で明確に認識しておくべきではないだろうか。

隣国に対する不満は読者や視聴者の間にたまっている。「あなたたちはいったいどこの国のメディアなんだ!」という批判がある。迎合するのではない。だがメディアが取り上げなければ、こうした言説はネット上でマニアの世界に閉じこもり、かえって暴発、炎上する恐れがある。

こうした空気は日韓双方にある。日本と韓国のあいだには、お互い「疲れ」があるのだ。

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そこにいる誰もが無力感や不安でいっぱいになっている。自分の優越性を否定されたり、比較され自分を貶められたりすることになった対象の「相手」を敵に見立て、言葉で攻撃し、除去し、自分の価値を問い直そうとしている。

「韓国なんて要らない」は、安住していた価値観から放逐されて生じる「アイデンティティ・クライシス」から出た言葉だ。これが相手を精神的、物理的に傷つけるようになると、「ヘイト・クライム」と「定義」される。最後の出口は、自然と対話が復活する状態になるのをひたすら待つしかない。

しかしヘイトでは、エスカレートしていく中にいると、自分で正しい判断ができなくなり、安心できる権威にすがり、アジテーターによって利用されやすい状況下に置かれてしまう。感情的な対立が政治や商業主義に利用されることもある。

そして「香港と中国」だが、後述するように、これも「ヘイト・クライム」の状態だ。人民解放軍が出てくる以前に、双方の民衆同士が香港や中国本土で傷つけ合うような、大変危険な状態になりつつある。それこそ1967年の「香港暴動(六七暴動)」のときのように悲惨な結末を生んで初めて収束するようなことになりかねない。