2019.10.11

就活生を苦しめる「黒髪至上主義」という呪縛は、かくして生まれた

元凶はとある1つの論文だった…?
平松 隆円 プロフィール

2005年に、生まれつき髪色が茶色である学生に対して、黒く染めるように指導が行われ、自主退学を迫られたとして訴訟に発展した事件を覚えている人もいるでしょう。この学生は高校入学時、黒く髪を染めて入学したものの、染髪のしすぎが原因で髪が傷んだため染められずにいたところ、教諭から黒く染めることを強要されたといいます。

この事件のポイントは、染めることを禁止しているのではなく、黒髪を強要しているところにあります。つまり、「髪色は生まれつき黒であるはずであり、髪色は黒にしなければならない」という固定観念が多くの日本人に存在というわけです。

 

髪染め批判を生んだ「インチキ論文」

髪色が明るい色になる、化粧をする。身だしなみが華美だと、誘惑が多い。そして、不良になる。そう考える教育者は、残念ながら今も少なくありません。

1937年、中西敬二郎という教育学者が『女学校に於ける不良傾向の早期発見と其の予防法』という論文を発表しました。それによると「所持品が奢侈になる、身だしなみが急におしゃれになると成績が下がる」とあります。この論文が発表された後、実際に教育現場で身なりに関する指導がとても厳しくなりました。

ですが、常識的に考えて、外見と勉強ができるかどうかはまったく別の問題です。実際、この論文も明確な根拠があって指摘をしたわけではありませんでした。というのも、学校風紀問題を何かに押しつけることで、学校批判を回避しようという戦略でしかなかったからです。

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例えば、明治期だと、読書は不純異性交遊を助長すると禁止されました。本を読まないから成績が上がらないんだと言われる、今の時代とは真逆です。髪を染めることも、学校批判を回避する戦略でしかないんです。

そんなことはない、という人もいるでしょう。確かに、髪を染めた学生や生徒の中に「不良」と思われても仕方ない行動をする者もいるかもしれません。とはいえ、これだけ学校教育と髪を染めることが定期的に話題になっていながら、髪を染めることと学業成績の相関性に関する研究は一切ありません。

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