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就活生を苦しめる「黒髪至上主義」という呪縛は、かくして生まれた

元凶はとある1つの論文だった…?

10月1日といえば、日本各地の企業で内定式が行われます。この日を境に、大学4年生の学生たちの就職活動がここで一段落します。そして、3年生の学生たちの就職活動が、企業訪問などを含めて実質的にスタートします。

筆者は化粧心理学や化粧文化論の研究者として、美容やファッションを研究する学科に勤めています。そのため、学科の特色から学生たちのファッションはみんな個性的です。昨日まで、ピンクゴールドの髪色だった学生が、今日会ったらネイビーだったということも珍しくありません。ですが、そんな学生たちですら不思議なことに、就職活動をはじめると、示し合わせたかのようにみな髪色を黒にするんです。

P&Gによるメッセージ広告「令和元年10月1日。内定式に、自分らしい髪で来てください。」/画像は公式サイトより

ヘアケアメーカーのプロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社が139社の協賛企業とともに、「令和元年10月1日。内定式に、自分らしい髪で来てください。」とメッセージ広告を展開したことは記憶に新しいかと思います。ただ、それでも「自分らしい」のは髪型であって、髪色ではないんです。

近年、就活の髪型を自由にすべきという見方が企業内でも少しづつ浸透していると思いますが、髪色に対する日本企業の抵抗感はまだまだ根強くあります。もちろんそれは、企業だけではなく学校教育現場でも同じです。

 

平安時代の人が愛した黒髪

なぜ日本人は、そうまでして「黒髪」にこだわるのでしょうか。たとえば、平安時代では、艶やかで長い黒髪が、美人の象徴でした。平安文学には、この髪の艶やかな黒を讃える表現を、様々に見ることができます。

『夜半の寝覚(よるのねざめ)』では、カワセミの羽の青色になぞらえ、艶々とした黒髪が美しいと表現しています。『浜松中納言物語』では、金の漆などのように、人の姿が映って見えるくらい、艶々としている髪が美しいと表現しています。