「推し」に、出会ってしまった

オタクを名乗っているわりに、ここ数年「推し」と言い切れる存在がいなかった。

20代半ばまでは、私だって、推しアイドルの握手会に参加するために写真集を複数買いし、推しBL作家の新刊を手に入れるために始発でコミケの待機列に並び、推し声優のラジオ公開録音イベントの整理券をゲットするために徹夜していた。

単純に何かにハマるだけでも精神と時間のリソースはそこそこ食われるのだが、いわんや人間自体を推すのはなおさら大変だった。

まず現場——コンサートやライブ、握手会など——に参加する権利を得るのに、各プレイガイドやファンクラブの抽選にあれこれ申し込まないといけない。東京会場に当たればいいけど、地方に行くなら航空券・ホテルをとって遠征のスケジュールを立てないといけない。

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良席でファンサービスをもらいたいと思えば、何公演も入らないといけない。だいたい、公演日程が発表されたら、前もってその期間の予定をあけておかねばならないのも面倒くさい。

自分一人では当てられないような高倍率の現場に備えて、日頃からオタク友達との連携を築いておかないといけないのも、苦手な人はいるだろう。「人」(これは二次元のキャラ、カップリングも含む)にフォーカスしたオタク活動のほうが、先立つものが多い。

今だって、愛している沼はたくさんある。しかし、漫画・小説・アニメや、コスメ、映画など「好きなときに自分のペースで楽しめる」ジャンルが主体だ。仕事に多くの時間を割いている自分のライフスタイルに合っているのもあるが、歳をとってオタク活動に使えるエネルギーが目減りしてきたゆえかもなぁとも思う。

だが、事件は起きた。

ゆるやかに楽しめる趣味としての映画を日々観るなかで、出会ってしまったのだ。俳優チュ・ジフンに……。