本連載が一冊の本『沼で溺れていたけれど』にまとまりました。
女とお金を軸に「愛・社会・しがらみ」をめぐり、意図せず沼に溺れた女性や、溺れることを決めた女性たち…その体験の先でそれぞれが見つけたものは、何だったのか? 連載時には書ききれなかった「その後の話」を新たに書き下ろしたインタビューエッセイ集です。
「推し」に、出会ってしまった
オタクを名乗っているわりに、ここ数年「推し」と言い切れる存在がいなかった。
20代半ばまでは、私だって、推しアイドルの握手会に参加するために写真集を複数買いし、推しBL作家の新刊を手に入れるために始発でコミケの待機列に並び、推し声優のラジオ公開録音イベントの整理券をゲットするために徹夜していた。
単純に何かにハマるだけでも精神と時間のリソースはそこそこ食われるのだが、いわんや人間自体を推すのはなおさら大変だった。