2008年9月15日。この日を境に人生が変わった人は世界中にいるはずだ。そう、リーマンショックである。アメリカの大手投資銀行リーマン・ブラザースの破綻により、一夜にしてすべての財産や家、そして職を失う人が続出した。

では、もしも子どもが二人いる家庭で、大黒柱として働いていた夫が、その影響で失業したら――。今回は、リーマンショックで大きく人生が変わったご家族の離婚について、ライターの上條まゆみさんがリポートする。最大の問題は、お金よりも別のことだった。

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絵に描いたように幸せな結婚生活

川辺美沙さん(仮名・53歳)は8年前、10歳と9歳の娘を連れて離婚した。元夫は6歳年上で、美沙さん34歳、元夫40歳のときに結婚。当時としては晩婚だったが、そもそも美沙さんには結婚願望がなかった。

「あまり子どもが好きではなかったし、結婚より仕事を頑張る人生にしたいと思っていました。大学を出てから商社などに勤めましたが、その後独立して化粧品のネット販売を始め、それなりに稼げるようになっていたんです。でも、34歳になったとき『子どもをもつなら最後のチャンスだ』と、なぜか突然、スイッチが入って」

それで、20代からの知り合いで、ずっと彼女にアプローチをしてくれていた男性と結婚を決めた。すぐに2人、年子で娘を授かった。

「元夫は町工場の2代目経営者で、サラリーマンではなく自分で仕事をしているところが私と合うと思いました。早くにお父さんを亡くしていて、母一人子一人でお母さんを大事にしているのも『この人なら家族を大事にしてくれるだろう』と。何より、私の仕事を理解し、応援してくれていた。結婚しても出産しても仕事を辞める気はなかったので、そこが一番のポイントでしたね」

元夫は、美沙さんのやることに「NO」と言ったことは一度もない。バブル世代としては珍しいほど、家事にも子育てにも協力的だった。美沙さんが出張で2〜3日家を空けても、まったく問題なし。愛妻家でもあり、元夫の提案で月に一度はベビーシッターに子どもを頼み、夫婦2人で食事に出かけた。

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経営している工場では、数人の正社員のほか十数人のパート社員を雇っていた。父親の代から勤めてくれている人も多く、正月に社長宅に遊びに来たり、みんなでバーベキューをするなど家族的な付き合いをしていた。そんな輪に美沙さんも、生まれた子どもたちも加わって――絵に描いたように幸せな結婚生活だった。