中国・習近平が狙う「仮想通貨」の覇権、米国をしのぐヤバすぎる思惑

米中の衝突はこんなところでも…
加谷 珪一 プロフィール

すでに戦争は始まっている

これまで規模の小さい途上国は、ドル覇権の下にぶらさがる形でしか通貨システムを構築できなかった。内戦が続き国土が荒廃したカンボジアでは、国連による暫定統治で経済を復活させたが、金融システムはドルと現地通貨の二本立てとなっている。現在、カンボジアはめざましい経済発展を遂げているが、これはカンボジアがドル経済圏であることと無縁ではない。

中国はカンボジアを中国経済圏に引き入れようと、莫大な資金を投下しているが、企業における決済や預金、投資がドルになっている以上、中国もそのルールに従わざるを得ない。通貨覇権を握っていることは、何兆円もの経済援助をはるかに上回る効果がある。

 

もしリブラが世界に普及した場合、自国通貨とリブラの二本立てで金融システムを構築する新興国が出てきても不思議ではない。こうした新興国は、リブラを交渉材料に、ドル覇権を狙う米国と人民元覇権を狙う中国を上手くてんびんにかけ、双方から好条件を引き出そうとするだろう。

つまりリブラという仮想通貨は、これまで構築してきたドル覇権を脅かす存在であり、そのドル覇権に対して挑戦状を叩きつけている中国にとっても、それは同じことである。

中国は発行を計画している人民元のデジタル通貨を用いて、国際的な人民元の普及を画策する可能性がある。表面上はリブラとは対立関係にあるが、この世界は「蛇の道は蛇」であり、リブラとデジタル人民元が共存することも十分にあり得るし、米国政府が水面下でフェイスブックとの交渉を進めている可能性も否定できない。

さらに言えば、ユーロ陣営や英国の動きにも注目する必要がある。

ユーロ圏各国は、表面的には仮想通貨規制で各国と足並みを揃えるというスタンスだが、ユーロ圏内では、ビットコインなどの仮想通貨を自由に流通させている(英国も同様)。欧州各国が、仮想通貨に対して警戒感を示しつつも、ドル経済圏に対する牽制球としての役割を仮想通貨に期待している面があるのは明らかだ。

日本では相変わらず、仮想通貨に対して感情的な議論ばかりだが、国際社会では、水面下で次の通貨覇権の確立に向けた権力闘争が始まっているのだ。