中国・習近平が狙う「仮想通貨」の覇権、米国をしのぐヤバすぎる思惑

米中の衝突はこんなところでも…
加谷 珪一 プロフィール

日本では政府が発行しないと通貨ではないといった議論をよく耳にするが、それは単なる思い込みである。経済学的に見た場合、通貨というのは、それに価値があると多くの人が認識すれば、通貨として流通する性質を持っている。政府の方が民間よりも信用度が高いので、法定通貨の方が流通しやすいのは事実だが、民間が発行主体であっても、通貨の要件を満たさないわけではない。

では、なぜ中国政府はリブラの計画をきっかけに、デジタル通貨の発行を進める決断を行ったのだろうか。その理由は、リブラが持つ潜在力が想像以上だったからである。

 

中央銀行が持つ「利権」が脅かされる

リブラについては、各国から様々な懸念が寄せられており、マネーロンダリング対策などで協議を進めていくとしている。だが、リブラにはマネロンに関する懸念があるという各国通貨当局の説明は、額面通りには受け取らない方がよいだろう。もちろん、匿名性の高い仮想通貨が世界に流通すれば、犯罪資金などの温床になる可能性はあるが、現金とは異なり、仮想通貨は理屈上、その行方を電子的に追跡できる。

現金ほど匿名性が高く、犯罪やテロに利用しやすい決済手段はほかにない。それにもかかわらず、現金が主な決済手段として全世界で使われている現状を考えると、仮想通貨が普及するとマネロン対策ができなくなるというのは杞憂に過ぎないことがお分かりいただけるだろう。

各国の通貨当局が本当に恐れているのは、マネロンなどではなく、リブラのような仮想通貨が普及することで、中央銀行が持つ巨大な利権が脅かされることである。

パウエルFRB議長〔PHOTO〕Gettyimages

現代の金融システムは、中央銀行が通貨を一元的に管理し、傘下にある民間銀行を通じてマネーの流通をコントロールすることで成り立っている。中央銀行はその気になれば、その国の経済を自由自在に操ることができるので、この仕組みは、中央銀行を頂点とした銀行による一種の産業支配システムと言い換えることもできるだろう。

実際、銀行は他の業種とは異なる位置付けとなっており、金融関係者は特別なエリート意識を持っている。経営危機となっても銀行だけは政府から救済してもらえるのは、銀行が特権的な立場にあるからにほかならない。

ここでリブラのような仮想通貨が広く流通する事態になると、状況が一変する。