# 米国経済

米国「雇用統計」が「思ったより悪くない」は本当か…その意外な真実

「誰が見ても悪い」頃には手遅れ
唐鎌 大輔 プロフィール

「失業率の低下」と「物価の下落」

昨年まで利上げ局面にあったFRBはこうした完全雇用とも言える労働市場の状況を踏まえ、「非線形に賃金が上昇してくる恐れ」も念頭に利上げを敢行していたが、その恐れはまだ顕現化しておらず、利上げ局面は終了、今や連続的な利下げを強いられている始末である。

上図は米国の失業率と物価基調(コアPCEデフレーター)の関係を示したフィリップス曲線のイメージだが、金融危機前には「失業率の低下」と「物価の上昇」の間に安定した関係が見られていたものの、過去5年では「失業率の低下」と「物価の下落」が安定した関係を持ちつつある。

労働市場の需給が逼迫しても賃金の上昇に跳ねず、一般物価の騰勢にも繋がらない状況であり、中央銀行として引き締めに転じるタイミングを推し量るのが非常に難しくなっていると考えられる。

 

9月雇用統計で最も着目すべきは(1)「NFP増加幅は減速基調にあること」、(2)「50年ぶりの水準への失業率低下」と「平均時給の失速」が同時に起きたことであり、「思ったより悪くなかった」などという抽象的な感情論で結果を糊塗すべきではないだろう。

景気に遅行する労働市場が「誰が見ても悪い」という状況になる頃には米金利やドルも新たな下値を見に行く地合いになっているはずである。現時点では「当面、米金利やドルが上がりそうにない」という見通しで備えたいところである。