ルーツは“マタギ犬”。東北の山岳地帯における、マタギの狩猟のよきパートナーだった。

秋田犬のルーツは奥羽山脈でマタギが飼育していた狩猟犬だ。地域の暮らしに根ざしたいわゆる土着犬だったが、江戸時代になり闘犬が盛んになると、より強い犬をつくり出すべく洋犬も含めての他犬種との交配が行われ、のちに秋田犬と呼ばれる純血種の数が極端に減ってしまったのだ。

大正時代になると、闘犬が禁止されたこと、また純血種を守る意義への意識が高まったことで、秋田犬保存会などが中心となり純血種を探し出し繁殖。少数ながらも純血種が残っていたのは、この頃はまだマタギがいたから。彼らの相棒は、山岳地帯での活動を得意とする、土地に根ざしたマタギ犬のほかには務まらなかったのだ。

保存会などによる努力は、秋田犬が日本の犬として初めて天然記念物指定を受けるところまで実を結んだが、大戦が勃発。毛皮や食肉としての供出の免除を狙い、秋田犬を守ろうと軍用犬としての訓練も施されたという。けれども、主人とのマンツーマンの関係を築く秋田犬の性質は軍隊で働くには向いていなかった。そして戦後、十数頭にまで減っていた純血種の秋田犬の血を絶やさぬよう、再び力が注がれたのだった。東北の環境に適した体質と、飼い主に忠実なワンオーナーという性質。その唯一無二の特性が、絶滅の憂き目に遭いそうになりながらも秋田犬が今日まで存在できている理由のひとつに違いない。

世界一有名な秋田犬・忠犬ハチ公も、秋田は大館の出身。

また、秋田犬の魅力を強烈に世に知らしめた一頭の犬の存在も無視できない。そう、帰らぬ主人を渋谷駅で何年も待ち続けたという、渋谷駅前に今も銅像が建っている、あの忠犬ハチ公だ。2009年に公開されたリチャード・ギア主演のハリウッド映画『HACHI約束の犬』のヒットのインパクトも相当に大きかった。

話し口は穏やかで、心はおおらか。シャイだけれど、一度打ち解ければ絆が生まれ、親密なつき合いができる。秋田で出会った人々の印象と、秋田犬のイメージはぴったりと重なる。犬は飼い主に似るとはよくいわれることだ。それもそのはず、人間と犬は、一説によれば1万年以上も前から共生関係にあったという。

犬と意思の疎通がとれたり同調したりすることについて、犬を飼ったことのある人なら誰もが実感としてわかっているはず。実際、人と犬とが見つめ合うと、双方にオキシトシンという愛情ホルモンの分泌が促進されるという研究結果もある。人のそばに寄り添い続けた犬には、それほどまでに人間に対する抜群の共感力があるのだ。秋田の人と秋田犬が似ているのは、何も不思議なことではないのかもしれない。

アメリカで初めて秋田犬を飼ったのはなんとヘレン・ケラー。ハチ公の逸話に感動したのをきっかけに1937年の初来日時、仔犬を譲り受けた。

秋田犬の里
2019年春にオープンしたばかりの観光拠点。ミュージアムや秋田犬展示室のほか、土産物屋も。
秋田県大館市御成町1-13-1
☎0186-59-4649
営業時間:9:00~18:00(11月~3月は~17:00)、展示室9:30~12:30、13:15分~16:15
定休日:なし、展示室は月(祝日の場合、翌火)
入館無料

秋田犬会館
世界中に支部を持つ秋田犬保存会の本部施設。犬種団体が管理する国内唯一の犬の博物室を擁し、年譜や資料、パノラマや映像など、多角的な展示で秋田犬の歴史と今がわかる。
秋田県大館市三ノ丸13-1
☎0186-57-8026
営業時間:9:00~16:00
定休日:8月13日午後
博物室入室料 大人200円、小人100円