中国政府が香港を吸収合併…「一国二制度」が終焉する日

だから香港市民は命懸けの戦いに出る
近藤 大介 プロフィール

――いずれにしても、デモはまったく止む気配がない。デモを行う側は、次の展開をどう考えているのか?

「次のヤマ場は、11月24日に行われる香港区議会議員選挙になるだろう。4年前の前回選挙は、『建制派』(親中派)が298議席、『民主派』が106議席と、民主派が惨敗した。『雨傘運動』を起こした『傘兵』(サンビン)たちも大量に立候補したが、当選者はわずか8名だった。

だが今回は、民主派が巻き返すのは必至の情勢だ。18区、452議席のうち大多数を獲得するだろう。

いま言われているのは、林鄭長官が『緊急事態だから』とか言い訳をつけて、区議会議員選挙を延期するのではということだ。だがそのような愚挙に出たら、全香港市民が黙っていない」

〔PHOTO〕gettyimages

昨日のチベット、今日の香港、明日の台湾

――そうやってデモがエスカレートしていくと、中国政府は最後には、何らかの形で鎮圧に乗り出すだろう。そしてそうなったら、香港の「一国二制度」が終了してしまう可能性が高い。

そんな中で、武力を持たない香港市民は、何に頼っていくのか?

 

「一つはアメリカ、もう一つは台湾だ。アメリカはまもなく、香港人権民主主義法案を可決する。これはわれわれにとって、バックアップになる。逆に、香港特別行政区政府及び中国政府にとっては、大きなプレッシャーとなるだろう。

また台湾では、『昨日のチベット、今日の香港、明日の台湾』という言葉が流行語になり、香港のデモに対する大きな共感の輪が広がっている。亡命者を受け入れようという運動も起こっている。この先、香港と台湾の市民同士の連帯は、ますます拡大していくだろう。

9月28日に開かれた民進党創建33周年の党大会では、蔡英文総統が『敵は内(国民党)ではなく、台湾海峡の向こう側(中国政府)だ』と述べて、大いに盛り上がった。来年1月に総統選挙が開かれるが、中国政府と対立する民進党の蔡英文総統の再選は、ほぼ間違いない情勢だ。

蔡英文政権も、われわれにとっては頼もしい味方だ」

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以上である。香港人の話を聞いていて、もしかしたら来年、中国政府が香港を吸収合併し、「一国二制度」を終焉させる事態も起こり得るのではないかと思えてきた。香港はすでに、1997年にイギリスから中国に返還されているので、万が一そうなったとしても、外国は口は出せるが、手は出せない。

ともあれ、香港返還から22年を経て、「一国二制度」が大きな岐路に立たされているのは間違いない。香港の状況は、また近く続報を書きたい。

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