中国政府が香港を吸収合併…「一国二制度」が終焉する日

だから香港市民は命懸けの戦いに出る
近藤 大介 プロフィール

――もしもアメリカが香港に対して制裁に乗り出せば、香港経済のダメージは深刻になるだろう。

「その通りだ。香港人が一番恐れているのは、香港ドルのドルペック廃止だ。香港ドルは、1983年にドルペック制に移行し、1ドル≒7・8香港ドルというほぼ固定した為替レートによって、存在感を保ってきた。

これは、香港経済の生命線になっている。それをアメリカに切られたら、香港ドルは急落し、香港経済は崩壊に向かうだろう。

そうなれば、香港の富裕層たちは、香港を離れ、移住してしまうに違いない。富裕層が消えれば、まさに香港の崩壊だ。

実際、すでに移民ラッシュが始まっている。人気があるのは、シンガポール、マレーシアなど、東南アジアで華人が多い地域だ。

日本は、移民先としては考えていない。日本政府の方針で移民が難しいこともあるが、もしも日本政府が移民制度を緩和したとしても、相続税が高すぎるので、香港人は日本へは行かないだろう。

だが、こうした事態を誰よりも恐れているのは、北京政府だ。香港経済が崩壊すると、中国経済に多大な影響を及ぼすからだ。

だから、人民解放軍が鎮圧に乗り出すという事態は、非現実的だ。多くの香港人は、そのあたりは楽観視している」

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中国政府の今後の出方

――中国政府は、10月1日の建国70周年を終え、これからは反転攻勢に乗り出すだろう。重ねての質問になるが、中国政府の今後の出方を、どう予測しているか?

 

「中国政府は、おそらく最後は林鄭月娥長官に責任を取らせる格好で退任させて、収束を図ろうとするだろう。

建国70周年記念式典には、林鄭長官も240人の香港代表団を引き連れて北京入りした。そこで、習近平主席に面会したはずだが、もしかしたら彼女は、辞意を表明したかもしれない。

行政長官の辞職に関しては、香港基本法第52条に規定がある。

『香港特別行政区行政長官は、下記に列挙する一つがあれば辞職しなければならない。
1. 重篤な病気もしくはその他の原因で、職務が履行できない場合
2. 立法会を通った法案を2度、署名拒否し、立法会を解散するも、再度、立法会を通過するか、もしくは全体議員の3分の2の多数で原案が通過し、それでも署名を拒否した場合
3. 立法会が財政予算案もしくは他の重要法案を拒絶し、立法会を解散後、新たな立法会が再度、その争点となっている原案を通すことを拒絶した場合』

だが、林鄭長官が辞意を表明したとしても、習主席はすぐには許可しないだろう。なぜなら、もしも辞めたら、次の行政長官選挙を巡って大モメになり、デモが勢いづくのは必至だからだ」