中国政府が香港を吸収合併…「一国二制度」が終焉する日

だから香港市民は命懸けの戦いに出る
近藤 大介 プロフィール

――その気持ちは理解できるが、一方で、デモが続くことによって、香港の観光客が激減したり、株価が下落したりして、香港経済にかなり打撃になっているように見受けられる。誰よりもカネに敏感と言われる香港人が、こうした損失については考慮しないのか?

「経済的なダメージは、自由を確保するための陣痛だとして、香港人は覚悟している。重ねて言うが、今回の戦いは、自分たちの生存を賭けた戦いなのだ。

これはあくまでも私の個人的な見通しだが、今後は、香港が独立を果たすか、それとも中国大陸に完全吸収されてしまうかというところまで行くのではないか。多くの香港人は退路を断って、香港特別行政区政府と、その背後にいる北京政府と戦う気でいる」

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人民解放軍による鎮圧はあるか

――「5大要求」のうち、中国政府が絶対に許容できないのが、普通選挙の実施だろう。これを認めると、香港独立を唱える候補者が行政長官になって、香港独立を宣言してしまうかもしれないからだ。

また、警察への調査というのも呑めないはずだ。香港特別行政区政府にとって、警察は最後の砦だからだ。

 

「香港での普通選挙は、香港基本法でも『目標』としており、本来なら2017年から実施されるはずだった。それを裏切ったのは、中国政府の方だ。だから5年前に『雨傘運動』が起こったのだ。

警察は今回、12歳から83歳までの2000人以上の『勇武派』市民(デモの前線に立つ人々)を拘束している。そして、拘束されたほとんどの市民は釈放されていない。

しかも、悪名高い『新尾嶺』(イギリス植民地時代の刑務所)にブチ込んでいるのだ。9月下旬になって、林鄭長官はようやくこの事実を認め、『大量の拘束者を拘留する場所がなかった。今後は使わない』と釈明した。

香港特別行政区政府は、中国大陸からのマスクや黒シャツの輸出をストップさせるといった姑息な手段に出ている。重ねて言うが、今後は夜間外出禁止令の発令、それにわれわれの『生命線』であるSNSを遮断するのではという危機感が広がっている。

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――周知のように武警は、すでに香港に隣接した深圳で、大規模なデモ鎮圧訓練を行っている。最後は、1989年の天安門事件の時のように、香港に駐留している人民解放軍が鎮圧に乗り出すかもしれない。そういったリスクは考えないのか?

「まず香港基本法に、武警に関する規定はない。それは武警の行動範囲は、あくまでも中国大陸であって、香港は含まれていないからだ。少なくとも、私を含めて多くの香港市民は、そのように考えている。

深圳での訓練は、デモする側も鎮圧する側も、深圳なのにわざわざ広東語で行ったりして(広東省では広東語を話すが、経済特区の深圳だけは普段は北京語)、香港人の怒りを倍加させた。

前述のように、香港でいま流れている噂は、デモを取り締まっている警察の中に、すでに中国の武警が入り込んでいるというものだ。おそらく近未来の実地調査をしているのだろう。それどころか、デモの若者の中にも密かに入り込み、わざと大袈裟な乱暴狼藉を働いているとも言われている。デモの若者が悪者であることを、内外に見せつけるためだ。

人民解放軍による鎮圧に関しては、香港基本法の第14条に規定がある。

『香港特別行政区政府は必要時に、中央人民政府に対して、駐香港の人民解放軍に社会の治安維持と災害救助を求めることができる』

だが、同じ香港人である香港特別行政区政府が、わざわざ人民解放軍に、香港市民の鎮圧を求めるだろうか? もしそんな事態になったら、現在『香港人権民主主義法案』を可決しようとしているアメリカが、直ちに制裁を発動するだろう」