2020年、カリフォルニアが「アメリカの未来」を左右する

デジタル・ゴールデンステイトへの変貌
池田 純一 プロフィール

AB5の論点

AB5自体は、今回の立法に先立ち、カリフォルニア州で争われた裁判(“Dynamex Operations West, Inc. v. Superior Court of Los Angeles”)の判決で示されたABCテストを立法化し明確にしたものだ。

労働者(worker)とは、なにをおいてもまず被雇用者(employee)であり、それをUberのように「独立契約者(independent contractor)」と呼びたいのなら、雇用者と思しき側に説明責任を担わせる。その際の基準がABCテストだ。ドライバーを従来どおり独立契約者として扱うなら、Uberは、ABCテストの3つの条件をクリアしていることを証明しなくてはならない。つまり、この条件を当該業務が満たしていることを、雇い主と目された側が証明できた時に限り、業務従事者は、被雇用者ではなく、独立契約者としてみなされ、雇用-被雇用の関係を免れることができる。

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一方、ABCテストの3つの条件をすべてクリアできない場合は、雇用-被雇用の関係が成立していることになり、雇用者は、カリフォルニア州が定める労働関連法制に従って、被雇用者を処遇しなければならない。

ABCテストのポイントは、アプリをダウンロードした人がそのアプリを介したサービスを提供する際に、その仕事内容のパフォーマンスについて、一切アプリ開発者からの干渉(=支持や命令)を受けず、その限りでアプリ開発事業者とは独立した事業であることを要件としていることだ。しかも、この内容は、事前に契約を交わした上で、それが実際に履行されていることが求められる。

これは、あくまでも「マーケットプレイスの創造」という名目で、ドライバーや乗客という「ユーザー」に対して、アプリ開発事業者が各種のインセンティブを設定することを見越してのものだ。インセンティブ設定とは、ドライバーから見れば、一種の「営業達成目標」であり、それをクリアすればより多くの利益が配分される。しかし、そのような状況下では、ドライバーを「独立契約者」と呼ぶのは難しい。自由な営業計画をドライバーの側で練れないからだ。

 

ABCテストでは、このような「マーケットプレイスの創造」を理由にドライバーの行動に干渉し、事実上、操作しようとする行為を禁じる。しかし、それでは、アプリ開発者の側は、自らの意志で「マーケットプレイスの(創造だけでなく)拡大」を図れなくなる。つまり、自分の判断で成長することができない。AB5はこうしたアプリ開発者側に生じるジレンマを予め見越している。

もちろん、アプリ開発側からすれば、すんなりとこの法律を受け入れるつもりはない。Uberは、LyftやDoorDashとともに、9000万ドルを使って、Ballot Initiativesの請願を行っている。つまり、カリフォルニア州在住の市民による直接投票を通じて、AB5の妥当性を問おうとしている。被雇用者として扱われることで義務が発生することを嫌う、半ば趣味でUberアプリを利用しているドライバーや、AB5の法制化で、一時労働者を被雇用者扱いしなければならなくなる他業界の困惑を味方につけようとする計画だ。Ballot Initiativesによる請願を通じて、法律のあり方に影響を与えようとするところもまた、カリフォルニア的な動きだ。プラットフォーマー規制のあり方として、今後も気にかけておくべき動きだろう。

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