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2020年、カリフォルニアが「アメリカの未来」を左右する

デジタル・ゴールデンステイトへの変貌

Uberの副作用

2019年9月18日、州知事のギャビン・ニューサムが署名をし、AB5(Assembly Bill 5)がカリフォルニア州法として成立した。2020年1月から効力を持つ。

このAB5は、直接的にはUberとLyftを狙い撃ちにした、ドライバーの労働環境改善を目的にした法律だ。だが、その効力が及ぶ範囲は広い。「ギグ・エコノミー」と呼ばれる、流動性や一時性の高い労働形態を、非正規労働から正規労働に組み込もうとするものだからだ。

 

法律が施行される2020年1月からカリフォルニア州は、UberやLyftのアプリを使ってサービスを提供しているドライバーを「独立契約者(independent contractor)」ではなく「被雇用者(employee)」として扱うことを求める。そうして州が定める労働者の保障(最低賃金や休暇取得、健康保険など)を付与する義務を課す。

つまりAB5により、ギグ・エコノミーのアプリを流布するUberのような企業は、今までのようにドライバーを乗客同様、アプリの「ユーザー」と言い続けることができなくなる。それでもなお、ドライバーたちをUberの被雇用者ではなく独立契約者であると言い続けたいのであるならば、AB5の中で記された3つの基準(「ABCテスト」)に即して証明しなければならない。

Uberのようなギグ・エコノミーの企業のロジックは、自分たちがしていることは、あくまでもアプリの開発による「マーケットプレイスの創造」であって、そのため、ドライバーも乗客も、ともにアプリのユーザーにすぎない、という認識だ。つまり、アプリの開発こそが自分たちの本業であり、ドライバーは、自分たちが用意したアプリを使って、自らの意志で起業した個人事業主である。そうして、Uberは自らを「テクノロジー・カンパニー」として社会にアピールする。

だが、それは詭弁だ、というのがカリフォルニア州政府の立場だ。州政府からすれば、Uberはテクノロジー・カンパニーなどではなく、ドライバーを募って乗客に向けた配車サービスを提供する「輸送企業」に該当する。であれば、ドライバーは彼らの事業を支える労働者であり、すなわち被雇用者だという論法だ。

この議論のズレの経緯については、UberやLyftの実態を詳らかに描いたエスノグラフィーである『ウーバーランド』が詳しい。

上では、単に労働規制についての話しかしなかったが、『ウーバーランド』を読んでいると、Uberは自らをテクノロジー・カンパニーと規定し輸送企業ではないと主張することで、たとえば、規制下にあるタクシー事業でなら法令違反となる身障者などに対する乗車拒否も放置されたままになっている、というような報告にも出くわす。

ゆくゆくは、タクシー事業者たちの職業倫理を削ぐことにも繋がりかねない。乗客の中には、(タクシーを含む)配車サービスに対する期待値を下げる人もでてくるかもしれない。Uberのテクノロジー・カンパニーという自己規定は、彼らの事業の外側にまで様々な副次的効果を生じさせている。

AB5の法制化は、こうした状況をこれ以上野放図のままにしないよう、州政府の管理下に収めようとするものだ。AB5と同種の法律の導入については、ニューヨーク州、ワシントン州、オレゴン州などでも検討中で、次はニューヨーク州と言われている。我々はマーケットプレイスを創造するテクノロジー・カンパニーだ、というUberの主張を覆すことで、「アップ・ベイスト・ワーク(App-based work)」と呼ばれる、アプリを通じて仕事を与えるような企業がUberと同様の扱いを受けることになる。