2019.10.10
# オムライス

ポムの樹が「オムライス専門店で1人勝ち」を維持する強さのヒミツ

価格設定、卵の焼き方、どれも絶妙
澁川 祐子 プロフィール

だが、オムライスタイプのごはんにケチャップが加わり、ケチャップライスへと変化することでごはんは脇役から主役に躍り出る。ごはんを具としたライス入りオムレツから、薄焼き卵に包まれたケチャップライスを食べるオムライスへ。そしてその味が、昭和の喫茶店へと受け継がれていったのだ。

「薄焼き」か「ふわとろ」か

現在にいたるまでに、卵とごはんの関係はもう一度逆転が起きている。それは、とろりとした半熟卵のかかった「ふわとろオムライス」の登場である。

その半熟オムライスを一躍世に知らしめたのが、1985(昭和60)年に公開された伊丹十三監督の映画『タンポポ』である。

ホームレスの男が、子どもにオムライスをつくってあげようと、閉店後の厨房に忍び込む。プレーンオムレツを手早くこしらえ、先につくっておいたケチャップライスの上にのせる。オムレツの真ん中をナイフでさっと切ると、なかから半熟卵がとろとろと勢いよく流れ出す。あのシーンで思わず唾を飲み込んだ人は、私だけではないだろう。

撮影場所となった東京・日本橋の洋食屋「たいめいけん」は以後、このオムライスを「タンポポオムライス」として売り出して人気を博し、いまに続く看板メニューになっている。

 

そもそも半熟オムライス自体の歴史は、もっと前からある。考案者とされるのは、1913(大正2)年創業の東京・本所吾妻橋の「レストラン吾妻」の2代目・竹山正次。時期は定かではないが、戦前から戦後にかけ、すでに半熟のオムライスにデミグラスソースをかけたタイプが提供されていたという。それが映画によって一躍脚光を浴びたのだ。

一度はケチャップライスにメインの座を奪われた卵。しかし、「ふわとろ」という新たな見た目と食感という強力な武器を手に入れ、再び主役に返り咲いた。さらに「ふわとろオムライス」は90年代後半のカフェブームの主力メニューとなり、広く市民権を得ていく。その背景には、1993年に登場して話題になったパステルの「なめらかプリン」のようなとろとろ食感人気とも無関係ではないだろう。

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