2019.10.10
# オムライス

ポムの樹が「オムライス専門店で1人勝ち」を維持する強さのヒミツ

価格設定、卵の焼き方、どれも絶妙
澁川 祐子 プロフィール

なるほど、これは「松竹梅」方式の応用だなと思った。お寿司など「松竹梅」の3段階が設定されていると、多くの人は中庸の「竹」を選ぶ。それと似たように、4サイズのうち2番目に小さいSサイズを選べば、それほどたくさん食べたという自覚は生まれない。罪悪感なしにがっつり食べられるという、まさに乙女心を読んだ巧みなサイズ設定なのである。業界首位の手腕を垣間見たり、だ。

では“オムライス業界”には、ほかにどんな店があるのだろうか。1963年に創業した「ラケル」、「洋麺屋五右衛門」なども展開する日本レストランシステムが1992年に起ちあげた「卵と私」は古株の部類といえる。一方、比較的新しいチェーンに、2002年から近畿地方を中心にフランチャイズ展開をスタートした「BABYFACE Planet's」、2007年創業の「神田たまごけん」などがある。昨今では、オムライス専門のデリバリーも出現している。

一過性のブームで消え去ることなく、断続的に新しい店が登場している“オムライス業界”。ただ、ひとくちに「オムライス」といえどもその中身は一様ではない。変化をみていく前に、まずは前提となるオムライスの歴史を辿ってみよう。

 

主従関係を変えたケチャップの誕生

オムライスの歴史は、卵とごはんの関係の歴史といってもいい。この二大要素の主従のバランスが、そのままオムライスの変容史でもあるのだ。それは、元祖の話からすでにはじまっている。

オムライスの発祥を語るとき、必ず名前が挙がる東西二つの店がある。

東は、東京・銀座にいまも営業を続ける老舗洋食屋「煉瓦亭」。創業の1895(明治28)年から5年ほど経った頃、元祖オムライスとされる「ライス入りオムレツ」が登場したといわれている。もとは従業員のまかない飯として、スプーン一つで食べられるようにと卵とごはんを混ぜてオムレツの形に焼いたもので、これを見た客から「自分もあれが食べたい」と頼まれ、メニューに載せるようになったという。

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