自分の人生を賭ける場所をみつけた。
そう思えた舞台『ミス・サイゴン』

そこから一気にミュージカルにのめり込んだ。わずか1年の間に、ニューヨークに足繁く通っては、3日連続でミュージカルのマチネ(昼公演)とソワレ(夜公演)をハシゴして、疲れたらゴスペルツアーに出かけるような、音楽漬けの日々を送った。数えてみたら、1年で観たミュージカルの本数は100本にもなっていた。

08年、『ミス・サイゴン』でキム役を演じることになった。キム役は、クアトロキャスト。笹本玲奈さん、新妻聖子さん、知念里奈さんという同世代のミュージカルスターが台頭してきた頃で、レッスン中は、「歌が上手いってこうことか!」と何度も打ちのめされた。ところが本番では、「ミュージカルこそ、自分が最も輝ける場所かもしれない」と思えるような体験をする。

「その日は、すべてのコンディションが最高にマッチした日でした。キムが自害して、最愛の男性であるクリスの腕の中で息絶えるとき、役と自分が同化したように、『もうこのまま死んでもいいや』と思えた。それまで感じたことのない、純粋で新鮮な感情でした。その経験によって、ステージが自分の居場所なんだと確信することができたんです」

以来、ミュージカルを中心に、出演オファーが殺到するようになるが、12年には、文化庁の新進芸術家海外研修制度を利用し、約1年間、ニューヨークに留学する。

「鍛えられました。才能も実力も努力もすごい人たちを目の当たりにして、いくつも壁にぶつかって、しょっ中泣いていました。打ちのめされることも多かったです。でも同時に、テクニックだけでは、人の心を揺さぶることができないことも学びました。“もっと芝居や歌が上手くなりたい”という思い以上に、大竹さんのように、人の心に残る芝居がしたいと考えるようになった。ニューヨークで得た一番のことは、精神を強く保つ秘訣だったかもしれない」