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アーモンドアイの調教師が明かす「競馬のウラ」

勝つために考えていること
先日発表された天皇賞・秋(10月27日)の登録馬を見て、わくわくしている人も多いだろう。現役最強牝馬アーモンドアイや皐月賞馬サートゥルナーリア、昨年のダービー馬ワグネリアンなど、錚々たるメンバーの名前が並んでいたからだ。
そのアーモンドアイの国枝栄調教師による初の著書『覚悟の競馬論』(講談社現代新書)が、発売3日にして早くも3刷が決まるなど、競馬界で大きな注目を集めている。はたして名伯楽・国枝師はどのような視点で競走馬を育成しているのか。いま競馬界が抱える大きな問題とは。熱狂に包まれるレースの「ウラ側」をお届けする。

「万事休す」と思った瞬間

場外馬券場や競馬場で馬券を購入する際、みなさんは騎手の個性や技量を大切な検討材料にしていると思う。

調教師にしても、騎手の得手不得手も考慮しながら、騎乗依頼することはある。その馬の脚質と騎手の手が合うか、先行が得意か後方待機を得意とする騎手かなど、つまりレースでは、その馬の特性に合わせた騎乗を騎手に任せているわけだ。

 

もちろん、私たち調教師は、出走馬の特性や成長を考慮しつつ、枠順や、他の出走馬の騎手や馬主さん、生産牧場、血統をチェックし、レース展開を予想したうえで作戦を練っている。

しかし、こんなことを言ってしまったら元も子もないかもしれないが、調教師のイメージ通りにすべてのコトがうまく運ぶことはない。レースは生きものなので、最終的にどんな結末を迎えるかはわからない、というのが正直なところだ。

実際、ドバイターフ優勝後の凱旋レースとなった、安田記念のアーモンドアイがそうだった。圧倒的な支持がうれしかったし、私も万全の準備を済ませており、自信もあった。

しかしながら、スタート直後の他馬の影響(斜行)で不運が重なり、アーモンドアイは身動きが取れず、後方11番手を余儀なくされた。万事休すかと思った。それでも最後はメンバー最速の追い込みで僅差の3着。残念な結果ではあったが、見せ場を作ることはできたと思っている。

レースは〝調教の延長線上にあるもの〟

私は勝っても負けても、騎手の意見を聞き入れながら、先々に向けて調整していくことを心がけている

なぜなら馬はデビューしてから引退までの間、どれくらい走ったかということが重要なので、最初の競馬を見て「じゃあ次はどうしたらいいか」と考えるところから私の調教プランは始まっているからだ。

そこから徐々に馬の個性を引き出しながらの競馬がベストだと考えているし、あくまでもレースは〝調教の延長戦上にあるもの〟と捉えているので、私の場合、なるべく乗り替わりは避ける(騎手を変えない)ようにはしている。

ファンからすればギャンブル的要素が高い、いきなり騎手を変える〝一発勝負〟に馬券的醍醐味を感じるかもしれないが、そこは馬優先ということでご容赦願いたい。

ただし作戦上、「ここで結果を出したい」「もう後がない」という場合には、馬主サイドの意向も踏まえたうえで、減量騎手を起用して勝負することはある。これはその馬の将来にも影響する局面なので、違った持ち味を引き出してみたいケースでもある。