Photo:福森クニヒロ
# 生命科学

山中伸弥が「ゲノム編集」には「厳しい規制」が必要という本当のワケ

ゲノム編集の暴走は始まっている

「人類は滅ぶ可能性がある」──。

これはNHKスペシャル「シリーズ人体Ⅱ遺伝子」収録中、山中伸弥さんがつぶやいた衝撃的な言葉である。さらに、山中さんは「一歩使い方を間違えると、とんでもないことになる」と言い表情を曇らせた。

果たして、遺伝子学の最前線で何が起きているのか。いまゲノム技術や遺伝子解析サービスの商業化などは急激なスピードで進んでいる。事実、2018年11月、中国でゲノム編集した受精卵から双子の女児が誕生したという衝撃的なニュースが世界を駆けめぐった。中国でのゲノム編集されたデザイナーベビー誕生は、人類にいったい何をもたらすのか。

今回、『シリーズ人体 遺伝子』書籍化のタイミングで「何がとんでもないことなのか、対策はあるのか」を山中さんに直接うかがう対談が実現。生命科学研究のトップリーダー山中伸弥さんと浅井健博さん(NHKスペシャル「シリーズ人体」制作統括)が、いまなぜ生命倫理が必要か──その最前線のリアルな「現実」を語り尽くした。

デザイナーベビーは作られてしまった

浅井 さまざまな課題がある中で、ここからは、今後どうやって生命科学の研究をコントロールしていけばよいかということについて、お話をうかがっていきたいと思います。

2018年11月、中国でゲノム編集した受精卵から双子の女児が誕生したという衝撃的なニュースが世界を駆けめぐりました。

「エイズウイルスに感染しにくくなるようにゲノム編集した胚を母体に着床させ、双子が生まれた」と、南方科技大学の賀建奎准教授が香港の学会で報告しました。

その真偽も含めて続報があまりありません。山中さんは、このニュースをお聞きになったときどう思われましたか?

 

山中 どこかで誰かが試みるのではないかと言われていましたので、やはり起こってしまったかというのが正直な感想です。ゲノム編集を研究する多くの人が、驚くというよりやっぱりという感想を持ったと思います。

2018年、初のゲノム編集した女児を出産させたと発表する中国・南方科技大学の賀建奎准教授photo by: getty images

浅井 日本では指針として禁止され、中国でも指針で制約がかけられています。それでも防げませんでした。

山中 指針の効力は弱いので、ヒト胚や生殖細胞のゲノム編集を法律で禁じるべきだと考えています。

人の体細胞クローンの作製については、各国が法律で禁止して、破ったら罰則もある。

そもそも体細胞クローンを作ろうと思ってもなかなか成功しません。それに対してゲノム編集は体細胞クローンよりも技術的にははるかに簡単です。今の段階では、より厳しい法的な規制が必要だと考えています。